アルキル基,ニトロ基の置換の酸性度への影響 薬剤師国家試験88回問7c
第88回薬剤師国家試験 問7c
下記の2つの化合物の酸性の強さを比較してみよう。
第88回薬剤師国家試験 問7c 解答解説
共役塩基の安定性は下記の通り
なので、
酸性度の強さの比較は下記の通り。
以下、詳細説明
化合物の酸性度とその共役塩基の安定性と塩基性の関係は下記の通り。
酸性が強い⇔共役塩基の安定性が高い、または、共役塩基の塩基性が弱い
酸性が弱い⇔共役塩基の安定性が高い、または、共役塩基の塩基性が強い
よって、酸の酸性度を比較するには、
その共役塩基の安定性・塩基性を比較すれば良い。
本問では、置換基による電子効果が物質の酸性度に与える影響を考える。
官能基の電子効果については
下記のリンク先を参照
誘起効果・共鳴効果とは
化合物中のある水素の酸性度について、
置換基の電子効果と共役塩基の安定性・塩基性の関係は下記の通り。
・ 置換基により電子供与性電子効果が与えられる場合、
共役塩基の負電荷の非局在化の度合いは低くなり、
共役塩基の安定性は低くなるため、
酸の酸性度は弱くなる(酸解離定数Kaは小さく、pKaは大きくなる)。
・ 置換基により電子求引性電子効果が与えられる場合、
共役塩基の負電荷の非局在化の度合いは高くなり、
共役塩基の安定性は高くなるので、
酸の酸性度は強くなる(Kaは大きく、pKaは小さくなる)。
★ アルキル基の電子供与性電子効果による酸性度の低下
下記の化合物はパラクレゾールであり、
フェノールのベンゼン環にメチル基が置換している。
この場合、アルキル基であるメチル基の電子供与効果により、
フェノール性OH(Ph−OH)の共役塩基(Ph−O:-)の負電荷の非局在化の度合いは低くなり、
共役塩基の安定性は低くなるので、
フェノール性OH(Ph−OH)の酸性度は弱くなる。
★ ニトロ基の電子求引性電子効果による酸性度の上昇
ニトロ基やシアノ基(CN)等のO,N,Sの不飽和結合を含む置換基は、
強力な電子求引性電子効果を与える。
下記の化合物はパラニトロフェノール(4-ニトロフェノール)であり、
フェノールのベンゼン環にニトロ基が置換している。
この場合、ニトロ基の電子求引効果により、
−OHの共役塩基(−O:-)の負電荷の非局在化の度合いは高くなり、
共役塩基の安定性は高くなるので、
−OHの酸性度は強くなる。
以上より、
共役塩基の安定性は下記の通り
なので、
酸性度の強さの比較は下記の通り。
★参考外部サイトリンク
酸・塩基の定義(猫でもわかる有機化学さん)