91回薬剤師国家試験問5 炭素−ハロゲン結合 分極,結合の距離・強さ・エネルギー

第91回薬剤師国家試験 問5
ハロアルカンの性質に関する記述のうち、正しいものはどれか。

 

a 炭素-ハロゲン結合の分極により、ハロゲンに結合した炭素原子はわずかに負電荷を持つ。
b ハロアルカンは同じ炭素数のアルカンより沸点が高い。
c フロロアルカンは対応する他のハロアルカンより求核剤との反応性が高い。
d ハロアルカンの炭素-ハロゲン結合距離はC-I、C-Br、C-Cl、C-Fの順に短くなる。

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第91回薬剤師国家試験 問5 解答解説
◆ aについて
a × 炭素−ハロゲン結合の分極により、ハロゲンに結合した炭素原子はわずかに負電荷を持つ。
→ 〇 炭素−ハロゲン結合の分極により、ハロゲンに結合した炭素原子はわずかに正電荷を持つ。

 

ハロゲン原子の電気陰性度は炭素原子よりも大きい。
よって、炭素−ハロゲンの結合では、炭素が正に分極し、ハロゲンが負に分極している。

 

91回薬剤師国家試験問5 炭素−ハロゲン結合 分極,結合の距離・強さ・エネルギー

 

 

★ ハロゲン−sp3炭素を有するハロゲン化合物は求核置換反応または脱離反応の基質となる。

 

ハロゲン(X)や酸素といった電気陰性度の大きい原子が結合したsp3炭素
(X−sp3炭素,O−sp3炭素)では、ハロゲン(X)や酸素がsp3炭素との共有電子を強く引っ張るため、
X−sp3炭素、O−sp3炭素の結合は大きく分極して切れやすくなっている。
このことから、ハロゲン−sp3炭素を有する有機ハロゲン化合物は求核置換反応(SN1,SN2)や脱離反応(E1,E2)の基質となる。

 

91回薬剤師国家試験問5 炭素−ハロゲン結合 分極,結合の距離・強さ・エネルギー

 

 

◆ bについて
b 〇 ハロアルカンは同じ炭素数のアルカンより沸点が高い。

 

ハロアルカンは炭素−ハロゲン結合の分極により双極子−双極子相互作用が働くため、
同じ炭素数のアルカンより沸点が高い。

 

 

◆ cについて
3 × フロロアルカンは対応する他のハロアルカンより求核剤との反応性が高い。
→ 〇 フロロアルカンは対応する他のハロアルカンより求核剤との反応性が低い。

 

求核置換反応について、
反応性と脱離基の性質に関する問題である。
詳細は下記のリンク先を参照
求核置換反応(SN1, SN2)の反応性と脱離基 91回問5c

 

 

◆ dについて
d 〇 ハロアルカンの炭素−ハロゲン結合距離はC−I、C−Br、C−Cl、C−Fの順に短くなる。

 

sp3炭素−ハロゲンの結合について、
F < Cl< Br < I とハロゲンが大きくなるにつれ、
結合距離は長くなり、また、結合エネルギーは小さくなる。

 

よって、炭素−ハロゲンの結合は、
F < Cl< Br < I とハロゲンが大きくなるにつれて結合が弱くなる。

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