アルケン mCPBA(過酸) エポキシド生成(エポキシ化) 98回薬剤師国家試験問103の4

第98回薬剤師国家試験 問103の4
AとBはそれぞれ互いに異性体である。以下の反応について、どちらが主生成物であるか判定してみよう。

 

アルケン mCPBA(過酸) エポキシド生成(エポキシ化) 98回問103の4

 

mCPBAはm(メタ)−クロロ過安息香酸である。

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薬剤師国家試験過去問題集 化学 アルケン

 

第98回薬剤師国家試験 問103の4 解答解説

 

★ アルケンの求電子付加反応

 

アルケンのC=Cはσ結合の上下にπ結合の電子雲が広がっているので、アルケンは電子豊富な構造である。
電子豊富なアルケンは求電子試薬と反応し、求電子付加反応を起こすことが多い。

 

アルケン mCPBA(過酸) エポキシド生成(エポキシ化) 98回問103の4

 

 

設問の反応について、

 

アルケン mCPBA(過酸) エポキシド生成(エポキシ化) 98回問103の4

 

4の反応はアルケンに過酸(R−C(=O)OOH))が反応し、C=Cに対してOがsyn付加したオキシラン(エポキシド)が生成する反応である。ここでのsyn付加とは、2つのC−O結合が立体的に同じ側にという意味である。
 反応の前後で基質の置換基の立体は保持される。transならtransのまま、cisならcisのままである。
4の反応前のアルケンの立体はtransなので、反応後のオキシランでもtransである。
 したがって、4の反応の主生成物はAである。

 

アルケン mCPBA(過酸) エポキシド生成(エポキシ化) 98回問103の4

 

アルケン mCPBA(過酸) エポキシド生成(エポキシ化) 98回問103の4

 

transアルケンから、A1またはA2のtransのオキシランが生成する。
本問のアルケンでは、過酸と反応し、O原子が上に付加するか下に付加するかで立体異性体が生じる。
A1とA2の不斉炭素の立体について、A1は(S,S)、A2は(R,R)で、A1とA2は互いにエナンチオマー(鏡像異性体)の関係にあるものであり、これらは同じ確率で生成し得る。
よって、4の生成物は互いにエナンチオマーの関係にあるA1とA2の等量混合物であるラセミ体となると考えられる。

 

また、この反応においてアルケンに付加する過酸(R−C(=O)OOH))のO原子は、C(=O)から最も離れた↓のO原子である。国試過去問で問われたことがあるので押さえておこう。

 

アルケン mCPBA(過酸) エポキシド生成(エポキシ化) 98回問103の4

 

 

★ アルケンと過酸(RCOOOH)が反応するとオキシラン(エポキシド)が生成する。
さらに、オキシラン(エポキシド)を酸触媒下で加水分解すると2つのOHがanti付加したアルコールが生成する。

 

アルケン mCPBA(過酸) エポキシド生成(エポキシ化) 98回問103の4

 

★ アルケン+過酸でオキシラン、その後に酸触媒加水分解でOHがanti付加となる理由
アルケン+過酸でオキシラン(エポキシド)が生成する。次に、オキシランが酸触媒下で加水分解されるにあたり、オキシランの三員環を構成している正に分極した炭素(Cδ+)にH2Oが求核付加するが、H2OがCδ+にアクセスする経路としてOのいない側(Oがいる方とは逆側)の方がアクセスしやすい。Oが上側にいればH2Oは下側に付加し、Oが下側にいればH2Oは上側に付加する。このことから、2つのOHがanti付加することになる。

 

★他サイトさんの解説へのリンク
第98回103(e-RECさん)

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