カルボン酸誘導体とグリニャール試薬との反応機構 98回薬剤師国家試験問104の4

第98回薬剤師国家試験 問104の4
以下の反応について、主生成物の構造の正誤を判定してみよう。ただし、すべての反応は終了後、適切な後処理を施してある。

 

カルボン酸誘導体とグリニャール試薬との反応機構 98回問104の4

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第98回薬剤師国家試験 問104 4 解答解説

 

設問の図の主生成物の構造は誤りである。
主生成物の構造は下記のようなものだと考えられる。

 

カルボン酸誘導体とグリニャール試薬との反応機構 98回問104の4

 

 

★ カルボン酸・カルボン酸誘導体を基質とした求核アシル置換反応

 

カルボン酸・カルボン酸誘導体を基質とする求核アシル置換反応については下記のリンク先を参照
カルボン酸・カルボン酸誘導体の求核アシル置換反応の概要

 

★ ヒドリドイオン(H−)またはアルキルアニオン(R−)が求核剤の場合は、2回求核攻撃が起こることに注意

 

カルボン酸・カルボン酸誘導体に対して求核試薬(Nu)としてヒドリドイオン(H−)やグリニャール試薬等由来のアルキルアニオン(R−)が求核攻撃する場合は、求核アシル置換反応の生成物がアルデヒド(R-CO-H)またはケトン(R1-CO-R2)であり、
これら生成物に対して追加的に求核試薬が付加反応を起こすことに注意が必要である。

 

設問の反応はカルボン酸誘導体であるエステルととグリニャール試薬(アルキルマグネシウムブロミド)との反応である。

 

カルボン酸誘導体とグリニャール試薬との反応機構 98回問104の4

 

グリニャール試薬では、Mgと結合した炭素が負電荷を帯びており(C:−)、カルボアニオン(R:−)として振る舞う。
カルボン酸誘導体(R1-CO-L)にグリニャール試薬(R2MgX)を反応させると、カルボアニオン(R2:−)による求核アシル置換反応の結果、R1-CO-Lにおいて脱離基(L)が炭化水素基(R2)に置換したケトン(R1-CO-R2)が生成する。さらに、生成したケトン(R1-CO-R2)に対してカルボアニオン(R2:−)が求核付加してアルコキシドイオン(R1-C(R2)2-O:-)が生成し、続いてそれがプロトン化され、最終的に元はカルボニルだった炭素に2つの炭化水素基(R2)とヒドロキシ基(−OH)が結合したアルコール(R1-C(R2)2-OH)を生成する。
1分子のカルボン酸誘導体に対して2分子のグリニャール試薬が反応する計算になる。

 

カルボアニオンは塩基性が強く反応性が高いので安定性が低い。生成物のアルコールからカルボン酸誘導体とカルボアニオンに戻る反応は起こりにくい。したがって、グリニャール反応は不可逆反応である。

 

カルボン酸誘導体とグリニャール試薬との反応機構 98回問104の4

 

設問の反応は下記のように進む。

 

カルボン酸誘導体とグリニャール試薬との反応機構 98回問104の4

 

★他サイトさんの解説へのリンク
第98回問104(e-RECさん)

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