特殊酸触媒・特殊塩基触媒で分解する医薬品の安定性とpH 108回薬剤師国家試験問178の3

108回薬剤師国家試験 問178の3
医薬品の水溶液中における安定性に関する記述の正誤を判定してみよう。

 

3 特殊酸触媒のみで分解する医薬品は、保存するpHを低くすることで安定性が改善する。

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108回薬剤師国家試験 問178の3 解答解説

 

3 × 特殊酸触媒のみで分解する医薬品は、保存するpHを低くすることで安定性が改善する。
→ 〇 特殊酸触媒のみで分解する医薬品は、保存するpHを高くすることで安定性が改善する。

 

◆ 特殊酸触媒反応に従う医薬品の安定性

 

特殊酸触媒とは、H3O+のことであり、
H3O+が酸触媒となる反応を特殊酸触媒反応と呼ぶ。

 

特殊酸触媒反応の分解1次速度定数kは次の@式で表される。
k = kH ・[ H3O+ ] …@

 

@式の両辺を常用対数とすると、
logk = log(kH・ [ H3O+ ])
= logkH + log [ H3O+ ]
pH = −log [ H3O+ ] より、
logk = logkH − pH …A

 

したがって、A式より、
特殊酸触媒反応では、
溶液のpHに対してlogkをプロットすると、傾きが−1の直線が得られる。
特殊酸触媒反応のpHプロファイルは下記の通り。

 

特殊酸触媒・特殊塩基触媒で分解する医薬品の安定性とpH 薬学108回問178の3

 

以上より、特殊酸触媒のみで分解する医薬品は、
pHが低いほど、分解反応速度定数kが高くなるので、安定性は低くなり、
pHが高いほど、分解反応速度定数kが低くなるので、安定性は高くなると考えられる。

 

 

◆ 特殊塩基触媒反応に従う医薬品の安定性

 

特殊塩基触媒とは、OHのことであり、
OHが塩基触媒となる反応を特殊塩基触媒反応と呼ぶ。

 

特殊塩基触媒反応の分解1次速度定数kは次のB式で表される。
k = kOH ・[ OH ] …B
と考えられる。

 

C式の両辺を常用対数とすると、
logk = log(kOH ・[ OH ])
= logkOH + log [OH ]
[ OH ] = Kw/ [ H3O+ ]より、
logk = logkOH + log (Kw/ [H3O+])
   = logkOH + log Kw − log [H3O+]
ここで、pH = −log [H3O+ ] より、
logk = logkOH + log Kw + pH …C

 

したがって、C式より、
特殊酸塩基触媒反応では、
溶液のpHに対してlogkをプロットすると、傾きが+1の直線が得られる。
特殊塩基触媒反応のpHプロファイルは下記の通り。

 

特殊酸触媒・特殊塩基触媒で分解する医薬品の安定性とpH 薬学108回問178の3

 

以上より、特殊塩基触媒のみで分解する医薬品は、
pHが低いほど、分解反応速度定数kが低くなるので、医薬品の安定性は高くなり、
pHが高いほど、分解反応速度定数kが高くなるので、医薬品の安定性は低くなる。

 

関連問題
特殊酸触媒でも特殊塩基触媒でも分解する医薬品の反応速度定数 94回問167a

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