薬剤師国家試験過去問題集 DDSの総合問題

チモロールマレイン酸塩持続性点眼液 108回薬剤師国家試験問276,277

108回薬剤師国家試験 問276?277
55歳男性。ゲーム開発企業に勤務しており、勤務時間中はディスプレイを見ることが多い。1年前より、目のかすみと視野の一部が見えづらく感じたため、眼科を受診したところ、緑内障と診断され、処方1にて治療している。今回の受診の際、眼圧が高くなっていることを指摘され、処方2が追加となった。

 

108回薬剤師国家試験問276,277 チモロールマレイン酸塩持続性点眼液

 

問276(実務)
薬剤師が行う処方2に関する説明のうち、適切なのはどれか。1つ選びなさい。
1 処方2の点眼液を先に点眼してください。
2 目のべたつきが持続することがあります。
3 点眼後はすぐにまばたきをし、薬液をなじませてください。
4 血圧が上昇することがあります。
5 2つの点眼液は、間隔をあけず続けて点眼してください。

 

問277(薬剤)
処方2の製剤が持続性を示す理由として、正しいのはどれか。1つ選びなさい。
1 油性の溶剤を用いて、薬効の発現を緩やかにしている。
2 薬物と添加剤が不溶性の複合体を形成している。
3 体温により、結膜嚢での薬物滞留性を向上させる物質が添加されている。
4 涙液の成分により、結膜嚢での薬物滞留性を向上させる物質が添加されている。
5 涙液のpH で徐々に溶解する懸濁粒子が配合されている。

 

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108回薬剤師国家試験 問276(実務) 解答解説

 

108回薬剤師国家試験問276,277 チモロールマレイン酸塩持続性点眼液

 

薬剤師が行う処方2に関する説明のうち、適切なのは、
2の「目のべたつきが持続することがあります。」である。

 

処方2のチモロールマレイン酸塩持続性点眼液(チモプトールXE点眼液)は、ゲル化点眼液である。
ゲル化点眼液は、点眼後にゲル化することで、薬物の結膜嚢内での滞留時間が延長する製剤である。
点眼液がゲル化する影響で、点眼直後は、目がかすんだり、べたつきが数分間持続することがあるので、患者に伝える必要がある。

 

以下、他の選択肢について

 

◆ 1について
1 × 処方2の点眼液を先に点眼してください。

 

処方1のビマプロスト点眼液(ルミガン)を先に点眼し、
処方2のチモロールマレイン酸塩持続性点眼液(チモプトールXE)を後に点眼する。

 

点眼の順番について、通常、
水性点眼→懸濁性点眼→ゲル化点眼→眼軟膏
の順に使用する。
ゲル化点眼液は、点眼後にゲル化するので、他の点眼の吸収を低下させる可能性がある。
よって、ゲル化点眼液は最後に点眼する。

 

したがって、本問の点眼の順番は、
水性点眼液であるビマプロスト点眼液(ルミガン)を先に点眼し、
ゲル化点眼液であるチモロールマレイン酸塩持続性点眼液(チモプトールXE)を後に点眼する。

 

 

◆ 3について
3 × 点眼後はすぐにまばたきをし、薬液をなじませてください。

 

点眼後すぐにまばたきをすると、点眼液の結膜嚢からの排出が促進され、薬効が失われる可能性がある。
よって、点眼液を結膜嚢内に留めるため、点眼後1〜5分間は、瞼を閉じ、目頭を押さえて保持する。

 

 

◆ 4について
4 × 血圧が上昇することがあります。
→ 〇 血圧が低下することがあります。

 

点眼液の薬物は、全身的に吸収される可能性がある。
チモロールは非選択的アドレナリンβ遮断薬である。
よって、チモロールを含む点眼液の使用により、全身的にアドレナリンβ遮断作用が現れる可能性があり、低血圧、徐脈、気管支痙攣などの副作用が現れることがある。
そのため、以下の患者には投与禁忌となっている。
・気管支喘息又はその既往歴のある患者、気管支痙攣又は重篤な慢性閉塞性肺疾患のある患者[喘息発作の誘発・増悪がみられるおそれがある。]
・コントロール不十分な心不全、洞性徐脈、房室ブロック(U、V度)又は心原性ショックのある患者[これらの症状を増悪させるおそれがある。]

 

 

◆ 5について
5 × 2つの点眼液は、間隔をあけず続けて点眼してください。
→ 〇 2つの点眼液は、10分以上の間隔をあけて点眼してください。

 

ゲル化点眼液との間隔は10分以上あける。

 

複数の点眼液を使用した場合、後に入れた点眼液により、前に入れた点眼液の成分の吸収を抑制することがある。
そのため、複数の点眼液を使用する場合は、一定の間隔をあけて点眼する必要がある。
ゲル化点眼液以外の点眼液との間隔は5分以上あけ、
ゲル化点眼液との間隔は10分以上あける。

 

本剤の点眼前の間隔が10分以上であることについて、他の点眼剤の吸収を抑制することに加え、以下に示す理由による。
チモロールマレイン酸塩持続性点眼液(チモプトールXE点眼液)は、添加物のジェランガムが涙液中の陽イオン(Na+、K+等)と接触することによりゲル化する。点眼刺激による涙液の反射分泌がチモプトールXE点眼液のゲル化に影響を与えないよう、十分な間隔をあけるのが望ましいと考えられることから、点眼前の間隔を10分以上とるよう設定された。

 

 

108回薬剤師国家試験 問277(薬剤)

 

処方2のチモロールマレイン酸塩持続性点眼液(チモプトールXE点眼液)が持続性を示す理由として、正しいのは、4の「涙液の成分により、結膜嚢での薬物滞留性を向上させる物質が添加されている」である。
本剤は、点眼後、添加物のジェランガムが涙液中の陽イオン(Na+、K+等)と接触し、眼表面でゲル化することにより、結膜嚢でのチモロールの滞留性が向上し、薬効が持続する。

 

なお、他のチモロールを主薬とする点眼のリズモン点眼液では、添加剤のメチルセルロースの熱可逆的ゾル−ゲル転移を利用し、持続性点眼液としている。

 

関連問題
・チモプトールXE点眼液を処方された患者の情報収集 98回問278,279

 

・メチルセルロースの熱可逆的ゾル−ゲル転移と点眼の持続性 104回問177の3

 

 

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108回問276,277(e-RECさん)

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