誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法の原理 100回薬剤師国家試験問97の1,2

100回薬剤師国家試験 問97の1,2
誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法に関する下記の記述の正誤を判定してみよう。

 

1 ICP発光分光分析法では、試料原子が基底状態から励起状態に遷移する際の発光を観測する。
2 ICP発光分光分析法では、高周波誘導結合法により得られたアルゴンプラズマ中に試料を導入する。

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100回薬剤師国家試験 問97の1,2 解答解説

 

1 × ICP発光分光分析法では、試料原子が基底状態から励起状態に遷移する際の発光を観測する。
→ 〇 ICP発光分光分析法では、試料原子が励起状態から基底状態に遷移する際の発光を観測する。

 

2 〇 ICP発光分光分析法では、高周波誘導結合法により得られたアルゴンプラズマ中に試料を導入する。

 

 

加熱によって試料中の物質の化学結合を切断し、
原子・イオンを励起させ、その後、基底状態に戻る際の発光による原子スペクトルを得る分析法を炎光光度法と呼ぶ。
炎光光度法には、炎色反応や誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法がある。

 

誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法は、
励起エネルギーを与える源として誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)を用いる。
高周波誘導結合法により得られた6000K以上のアルゴンプラズマに対して
試料溶液をネブライザーなどで導入する。
高温のプラズマ中で試料が加熱されると、
物質の化学結合は切断されて原子化またはイオン化し、
さらに加熱されることで原子・イオンの最外殻電子は基底状態から励起状態へと遷移する。
その後、励起状態の原子・イオンがエネルギーを放出して基底状態へ戻る際、発光が起こる。
その光は多くの輝線の束であり、
その中から特定波長の輝線を分光器で選別して検出器に導き、
発光の輝線スペクトルを得る。

 

得られた発光の輝線スペクトルを分析することで、
波長を分析することで元素の特定ができ(定性分析)、
さらに発光強度から定量ができ、
それらを多元素について同時に分析することが可能である。

 

これらの点は、原子吸光光度法が多元素の同時分析ができず、
また、定性分析には向かないことと異なる。

 

誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法における干渉について、
物理干渉,分光干渉,イオン化干渉がある。
ICP発光分光分析法では原子吸光光度法で見られるような化学干渉はほとんど起こらない。
その理由は、ICP発光分光分析法で試料が導入されるプラズマは6000K以上の高温のため、
試料中の物質の原子化・イオン化が妨げられることはほとんどないためである。

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