ヒドロキソコバラミンを解毒薬として用いる中毒原因物質 111回薬剤師国家試験問23の解説

111回薬剤師国家試験 問23
ヒドロキソコバラミンを解毒薬として用いる中毒原因物質はどれか。1つ選びなさい。
1 モルヒネ
2 タリウム
3 鉛
4 シアン化カリウム
5 アニリン

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111回薬剤師国家試験 問23 解答解説

 

ヒドロキソコバラミンを解毒薬として用いる中毒原因物質は、
選択肢4のシアン化カリウムです。

 

111回薬剤師国家試験問23の解説 ヒドロキソコバラミンを解毒薬として用いる中毒原因物質

 

 

ヒドロキソコバラミンは、シアン化物中毒の解毒薬として用いられます。

 

シアン化カリウムは体内で シアン化物イオン(CN) を生じ、
ミトコンドリアの電子伝達系にある シトクロムcオキシダーゼを阻害します。
その結果、酸素があっても細胞が酸素を利用できなくなり、細胞内呼吸が障害されます。
これにより ATP産生が低下します。
ヒドロキソコバラミンは、分子中のコバルトにシアン化物イオンを結合させ、シアノコバラミンを形成します。
シアノコバラミンは比較的毒性が低く、尿中に排泄されるため、シアン化物を無毒化できます。

 

したがって、ヒドロキソコバラミンを解毒薬として用いる中毒原因物質は、シアン化カリウムです。

 

以下では、他のシアン化カリウム中毒の解毒薬について解説します。

亜硝酸ナトリウム・亜硝酸アミル

 

亜硝酸ナトリウムや亜硝酸アミルは、
ヘモグロビンの一部を酸化して メトヘモグロビンを作ります。

 

メトヘモグロビン中の鉄は Fe3+ で、シアン化物イオンと結合しやすいため、
シアン化物をシトクロム酸化酵素から引き離して、シアンメトヘモグロビンとして捕捉します。
ただし、メトヘモグロビンを作るため、酸素運搬能を低下させる欠点があります。
火災煙吸入などで一酸化炭素中毒を合併している可能性がある場合や、
もともと低酸素が強い場合には注意が必要です。

 

 

チオ硫酸ナトリウム

チオ硫酸ナトリウムは、シアン化物をより毒性の低いチオシアン酸イオン(SCN)へ変換するための硫黄供与体として働きます。

 

この反応には、主にミトコンドリア酵素のロダネーゼが関与します。

 

反応を簡略化すると、

 

CN + S供与体 → SCN

 

です。

 

生成したチオシアン酸イオンは、主に尿中へ排泄されます。
チオ硫酸ナトリウムは単独でも使われますが、
古典的には 亜硝酸ナトリウム投与後にチオ硫酸ナトリウムを投与する方法が知られています。

 

シアン化カリウム中毒の解毒薬として、
・ヒドロキソコバラミン
・亜硝酸ナトリウム/亜硝酸アミル
・チオ硫酸ナトリウム

 

以上を押さえておきましょう。

 

以下では他の選択肢について解説します。

1 モルヒネ

モルヒネはオピオイド受容体作動薬です。
過量では中枢神経系と呼吸中枢が抑制されます。
典型的な中毒症状は、意識障害、呼吸抑制、縮瞳です。
特に重要なのは呼吸抑制で、重症では低酸素、昏睡、死亡につながります。
モルヒネ中毒の解毒薬は ナロキソンです。
ナロキソンはオピオイド受容体拮抗薬で、モルヒネなどのオピオイドの作用を競合的に遮断します。

 

 

2 タリウム

タリウムは重金属の一種で、体内ではカリウムに似た挙動を示し、
神経系や消化管、毛包などに障害を起こします。
中毒症状としては、初期に 悪心、嘔吐、腹痛、下痢などの消化器症状が出ます。
その後、四肢のしびれ、疼痛、末梢神経障害が目立ちます。
特徴的なのは、遅れて出る 脱毛です。

 

タリウム中毒の解毒・治療には プルシアンブルー(ヘキサシアノ鉄(II)酸鉄(V)水和物)が用いられます。
プルシアンブルーは腸管内でタリウムを捕捉し、再吸収を抑えて便中排泄を促進します。

 

 

3 鉛

無機鉛の主な中毒症状は、中枢神経症状、腹痛、貧血、腎障害などがあります。
無機鉛中毒の貧血は、ヘム合成酵素が阻害されることによります。
特に、δ-アミノレブリン酸脱水酵素やフェロケラターゼなどが障害され、
ヘモグロビン合成が低下します。

 

無機鉛中毒の解毒・治療はキレート剤を投与して排泄を促すことです。
代表薬はエデト酸カルシウム二ナトリウム、ジメルカプロール(BAL)、
ペニシラミンなどです。

 

有機鉛は脂溶性が高いため、
有機鉛中毒では脳組織に移行したものが中枢神経障害が起こします。
有機鉛中毒に対する特異的な解毒薬はありません。

 

 

5 アニリン

アニリンは メトヘモグロビン血症を起こす代表的な化学物質です。

 

通常、ヘモグロビン中の鉄は Fe2+ で酸素と結合できます。
しかし、アニリンなどにより酸化されると Fe3+ となり、メトヘモグロビンになります。
メトヘモグロビンは酸素を運搬できないため、組織低酸素を起こします。
アニリンの中毒症状は、チアノーゼ、頭痛、めまい、息切れ、頻脈、意識障害などです。
酸素を投与してもチアノーゼが改善しにくい点が特徴です。

 

アニリン中毒の解毒薬は メチレンブルー(メチルチオニニウム塩化物水和物)です。
メチレンブルーは体内でロイコメチレンブルーとなり、メトヘモグロビンをヘモグロビンへ還元します。

 

 

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