薬剤師国家試験過去問題集 ターゲティング

薬物とターゲティング技術に関する記述 107回薬剤師国家試験問183

107回薬剤師国家試験 問183
薬物とターゲティング技術に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 レボドパは、主にP−糖タンパク質により選択的に脳内に取り込まれる。
2 サラゾスルファピリジンは、腸内細菌により5−アミノサリチル酸に変換される。
3 フルシトシンは、腫瘍細胞内の酵素により5−フルオロウラシルに変換される。
4 アルプロスタジルは、乳酸・グリコール酸共重合体マイクロスフェアを担体として病変部位にターゲティングされる。
5 ガラクトシル人血清アルブミンジエチレントリアミン五酢酸テクネチウムは、肝細胞膜上のアシアロ糖タンパク質受容体に強く結合する。

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107回薬剤師国家試験 問183 解答解説

 

◆ 1について
1 × レボドパは、主にP−糖タンパク質により選択的に脳内に取り込まれる。
→ 〇 レボドパは、主にアミノ酸トランスポーターのLAT1により選択的に脳内に取り込まれる。

 

レボドパは、ドパミンを親化合物とするプロドラッグであり、その目的は脳内への移行性改善である。
ドパミンは血液脳関門を通過できないが、レボドパはアミノ酸トランスポーターのLAT1により脳内に移行される。LAT1(L-type amino acid transporter 1)は、フェニルアラニン,トリプトファン,ロイシンなどの中性アミノ酸を輸送するトランスポーターである。脳内移行したレボドパは、脱炭酸酵素により脱炭酸されてドパミンとなり、薬効を発揮する。

 

107回薬剤師国家試験問183 薬物とターゲティング技術に関する記述として、正しいのはどれか

 

 

◆ 2について
2 〇 サラゾスルファピリジンは、腸内細菌により5−アミノサリチル酸に変換される。

 

経口投与されたサラゾスルファピリジンは、
一部は未変化体のまま小腸で吸収されるが、大部分は大腸に運ばれ、腸内細菌によりアゾ基が還元され、
5-アミノサリチル酸(5-Aminosalicylic Acid:5-ASA)とスルファピリジンに分解されて吸収される。
抗炎症作用を示すのは、5-アミノサリチル酸(5-ASA)の方であると考えられている。

 

107回薬剤師国家試験問183 薬物とターゲティング技術に関する記述として、正しいのはどれか

 

よって、サラゾスルファピリジンは5-アミノサリチル酸(5-ASA)のプロドラッグであり、
潰瘍性大腸炎や関節リウマチに適応される。

 

 

◆ 3について
3 × フルシトシンは、腫瘍細胞内の酵素により5-フルオロウラシルに変換される。
→ 〇 フルシトシンは、真菌細胞内の酵素により5-フルオロウラシルに変換される。

 

フルシトシン(アコンチル)は、真菌細胞内で選択的に活性化するよう設計された5-フルオロウラシル(5-FU)のプロドラッグである。
フルシトシンは、抗真菌薬であり、真菌細胞膜のシトシン透過酵素を介して真菌細胞内に選択的に取り込まれた後、細胞内の酵素により脱アミノ化されて5-フルオロウラシル(5-FU)となる。
5-FUは、細胞内で5-フルオロデオキシウリジン-5´-一リン酸(FdUMP)に代謝され、チミジル酸シンターゼ(チミジル酸合成酵素)と共有結合を形成し、
これを不可逆的に阻害することで、核酸合成を阻害する。

 

107回薬剤師国家試験問183 薬物とターゲティング技術に関する記述として、正しいのはどれか

 

 

◆ 4について
4 × アルプロスタジルは、乳酸・グリコール酸共重合体マイクロスフェアを担体として病変部位にターゲティングされる。

 

アルプロスタジルの注射液は、脂溶性のアルプロスタジルが大豆油滴内に封入され、卵黄レシチンで水中に乳化されたリピッドマイクロスフェア製剤である。
リピッドマイクロスフェアは、投与後にマクロファージなどの免疫細胞に貪食される性質があり、炎症部位、血管損傷部位、動脈硬化部位などへ集積する特性があるので、これらの部位に薬物を送達する受動的ターゲティングに利用される。

 

なお、4の記述中の乳酸・グリコール酸共重合体マイクロスフェアを担体として用いる製剤として、注射剤のリスパダールコンスタやリュープリンなどがあり、これらは作用の持続化を目的としている。

 

関連問題
・リピッドマイクロスフェア製剤のアルプロスタジル注射液 102回問280,281

 

・乳酸・グリコール酸共重合体の性質と用途 102回問175の2

 

 

◆ 5について
5 〇 ガラクトシル人血清アルブミンジエチレントリアミン五酢酸テクネチウムは、肝細胞膜上のアシアロ糖タンパク質受容体に強く結合する。

 

ガラクトシル人血清アルブミンジエチレントリアミン五酢酸テクネチウムは、
シンチグラフィによる肝臓の機能及び形態の診断に用いられる検査薬であり、
99mTcから放出されるγ線が核医学検査装置により画像化される。

 

ガラクトシル人血清アルブミンジエチレントリアミン五酢酸テクネチウムは、肝細胞膜上のアシアロ糖タンパク質(ASGP)受容体に強く結合し、肝細胞内に取り込まれる能動的ターゲティング製剤である。ASGP受容体量は肝疾患の病態によって減少することが知られており,本剤のように放射性核種で標識した合成糖たん白を投与し、体内での肝集積の様相を評価することによって肝機能を診断することができる。

 

 

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