β酸化 β-ヒドロキシアシルCoAからβ-ケトアシルCoAへの変換 106回薬剤師国家試験問106

第106回薬剤師国家試験 問106
β酸化による脂肪酸の代謝反応におけるβ-ヒドロキシアシルCoAからβ-ケトアシルCoAへの変換過程を以下に示す。その変換過程について想定される反応機構に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。

 

β酸化 β-ヒドロキシアシルCoAからβ-ケトアシルCoA 106回薬剤師国家試験問106

 

1 ヒドロキシアシルCoA 脱水素酵素の図中の170番のグルタミン酸残基は、158番のアミノ酸残基Xの側鎖のイミダゾリル基の塩基性を高めている。

 

2 158番のアミノ酸残基Xはヒスチジン残基である。
3 補酵素アはFADである。
4 補酵素アはプロトン受容体として機能している。
5 補酵素アはピリミジン骨格をもつ。

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第106回薬剤師国家試験 問106 解答解説

 

脂肪酸のβ酸化において、ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素の触媒により、β-ヒドロキシアシルCoAが脱水素され(酸化)、β-ケトアシルCoAが生成する。この反応では、補酵素のNAD+(酸化型NAD)が還元され、NADHとなる。

 

β酸化 β-ヒドロキシアシルCoAからβ-ケトアシルCoA 106回薬剤師国家試験問106

 

NADとは、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド (nicotinamide adenine dinucleotide)である。

 

β酸化 β-ヒドロキシアシルCoAからβ-ケトアシルCoA 106回薬剤師国家試験問106

 

補酵素のNAD+がβ-ヒドロキシアシルCoAのβ炭素の水素をヒドリド(H−)として受け取りNADHになると同時に、β-ヒドロキシアシルCoAのβ-ヒドロキシ基の水素が脱水素酵素の158番ヒスチジン残基のイミダゾリル基によってプロトン(H+)として引き抜かれている。
脱水素酵素の170番グルタミン酸残基はイミダゾリル基からプロトンを引き抜くことで、イミダゾリル基の塩基性を高めている。その機序については次のことが考えられる。

 

・イミダゾリル基の窒素原子をアニオンにするので、塩基性が高まる。
・イミダゾリル基がプロトンを受け取って生成する共役酸を安定化するので、塩基性が高まる。

 

 

以上より、
設問の1〜5の記述の正誤は以下の通り。

 

1 〇 ヒドロキシアシルCoA 脱水素酵素の図中の170番のグルタミン酸残基は、158番のアミノ酸残基Xの側鎖のイミダゾリル基の塩基性を高めている。

 

2 〇 158番のアミノ酸残基Xはヒスチジン残基である。

 

3 × 補酵素アはFADである。
→ 〇 補酵素アはNAD+である。

 

4 × 補酵素アはプロトン受容体として機能している。
→ 〇 補酵素アはヒドリド受容体として機能している。

 

5 × 補酵素アはピリミジン骨格をもつ。
→ 〇 補酵素アはプリン骨格,ピリジン骨格,フラノース環をもつ。

 

下記がピリミジンであるが、補酵素アには含まれない。

 

β酸化 β-ヒドロキシアシルCoAからβ-ケトアシルCoA 106回薬剤師国家試験問106

 

補酵素アはニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(nicotinamide adenine dinucleotide:NAD)の酸化型(NAD+)である。

 

β酸化 β-ヒドロキシアシルCoAからβ-ケトアシルCoA 106回薬剤師国家試験問106

 

なお、FAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)は下記の構造であり、β酸化では下記のアシルCoA脱水素酵素の補酵素として必要である。

 

β酸化 β-ヒドロキシアシルCoAからβ-ケトアシルCoA 106回薬剤師国家試験問106

 

 

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