108回薬剤師国家試験問107 アスパラギン酸プロテアーゼ及びシステインプロテアーゼによる加水分解

108回薬剤師国家試験 問107
図1及び図2は、アスパラギン酸プロテアーゼ及びシステインプロテアーゼによる基質加水分解の初期反応過程の模式図である。以下の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。

 

108回薬剤師国家試験問107 アスパラギン酸プロテアーゼ及びシステインプロテアーゼによる基質加水分解

 

1 アスパラギン酸残基アと水の相互作用は、水の酸素原子の求電子性を高めている。
2 アスパラギン酸残基イと基質カルボニル基の相互作用は、基質カルボニル基の求核性を高めている。
3 システイン残基エのスルファニル基は、塩基として働く。
4 ヒスチジン残基ウとシステイン残基エの相互作用は、エのスルファニル基の求核性を高めている。
5 アスパラギン酸残基アとヒスチジン残基ウは、塩基として働く。

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108回薬剤師国家試験 問107 解答解説

 

◆ 1について
1 × アスパラギン酸残基アと水の相互作用は、水の酸素原子の求電子性を高めている。
→ 〇 アスパラギン酸残基アと水の相互作用は、水の酸素原子の求核性を高めている。

 

アスパラギン酸残基アは、塩基として働き、
カルボキシラートイオン(−COO)が水の水素をプロトンとして引き抜くことで、
水の酸素原子の求核性を高めている。

 

108回薬剤師国家試験問107 アスパラギン酸プロテアーゼ及びシステインプロテアーゼによる基質加水分解

 

 

◆ 2について
2 × アスパラギン酸残基イと基質カルボニル基の相互作用は、基質カルボニル基の求核性を高めている。
→ 〇 アスパラギン酸残基イと基質カルボニル基の相互作用は、基質カルボニル基の求電子性を高めている。

 

アスパラギン酸残基イは、酸として働き、
カルボキシ基(−COOH)がペプチド結合のカルボニル酸素にプロトンを結合させることで、カルボニル酸素がより強く電子を引き付けるようになり、
その結果、カルボニル炭素において、電子密度が低下し、求電子性が高まる。

 

108回薬剤師国家試験問107 アスパラギン酸プロテアーゼ及びシステインプロテアーゼによる基質加水分解

 

以上の通り、アスパラギン酸プロテアーゼは、
活性部位の2つのアスパラギン酸残基の働きで、
求核剤の水分子の酸素原子の求核性を高め、さらに、
基質のペプチド結合のカルボニル炭素の求電子性を高めることにより、
水分子の酸素原子のカルボニル炭素に対する求核攻撃を促進し、
ペプチド結合の加水分解を触媒する。

 

 

◆ 3,4について
3 × システイン残基エのスルファニル基は、塩基として働く。

 

4 〇 ヒスチジン残基ウとシステイン残基エの相互作用は、エのスルファニル基の求核性を高めている。

 

システインプロテアーゼにおいて、
ヒスチジン残基ウは塩基として働き、
イミダゾール基がシステイン残基エのスルファニル基(−SH)の水素をプロトンとして引き抜くことで、スルファニル基の硫黄原子の求核性を高めている。
求核性の高まったスルファニル基の硫黄原子は、ペプチド結合のカルボニル炭素に対して求核攻撃を行う。
このようにしてシステインプロテアーゼは、ペプチド結合の加水分解を触媒する。

 

108回薬剤師国家試験問107 アスパラギン酸プロテアーゼ及びシステインプロテアーゼによる基質加水分解

 

システイン残基エのスルファニル基は、
ヒスチジン残基ウとの反応では酸として働き、
ペプチド結合のカルボニル炭素に対しては求核剤として働く。
よって、システイン残基エのスルファニル基は、塩基としては働かない。

 

 

◆ 5について
5 〇 アスパラギン酸残基アとヒスチジン残基ウは、塩基として働く。

 

アスパラギン酸残基アとヒスチジン残基ウはプロトンを引き抜いているので、
塩基として働いている。

 

108回薬剤師国家試験問107 アスパラギン酸プロテアーゼ及びシステインプロテアーゼによる基質加水分解

 

 

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