酸化還元反応と化学電池に関する記述 108回薬剤師国家試験問93

108回薬剤師国家試験 問93
酸化還元反応と化学電池に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。

 

1 酸化還元反応において、電子を受け取るのは還元剤である。
2コハク酸(C4H6O4) + FAD → フマル酸(C4H4O4) + FADH2 の反応において、コハク酸は酸化剤である。
3 進行中の酸化還元反応の起電力は、Henderson?Hasselbalch の式で表すことができる。
4 電解質の濃度のみが異なる2つの半電池からなる化学電池(濃淡電池)の標準起電力は0V である。
5 反応が自発的に進行している化学電池では、カソード(正極)で還元反応が起こる。

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薬剤師国家試験過去問題集 物理 電気化学・電池

 

 

108回薬剤師国家試験 問93 解答解説

 

◆ 1について
1 × 酸化還元反応において、電子を受け取るのは還元剤である。
→ 〇 酸化還元反応において、電子を受け取るのは酸化剤であり、電子を失うのは還元剤である。

 

酸化とは電子を失うことであり、
還元とは電子を受け取ることである。

 

酸化還元反応において、
酸化剤とは相手を酸化して自身は還元される物質であり、
還元剤とは相手を還元して自身は酸化される物質である。

 

 

◆ 2について
2 × コハク酸(C4H6O4) + FAD → フマル酸(C4H4O4) + FADH2 の反応において、コハク酸は酸化剤である。

 

有機化学では、化合物中のある原子(主に炭素)の電子密度が低下することも酸化という。
炭素の電子密度が低下する酸化に該当する反応として、炭素より電気陰性度の小さい水素が外れること、および、炭素より電気陰性度の大きい酸素,窒素,ハロゲンが結合することが挙げられる。

 

有機化学では、化合物中のある原子(主に炭素)の電子密度が上昇することも還元という。
炭素の電子密度が上昇する還元に該当する反応として、炭素より電気陰性度の小さい水素が結合すること、および、炭素より電気陰性度の大きい酸素,窒素,ハロゲンが外れることが挙げられる。

 

コハク酸(C4H6O4) + FAD → フマル酸(C4H4O4) + FADH2 の反応において、
コハク酸は水素が2つ外れているので酸化されたと言え、
FADは水素が2つ結合しているので還元された言える。
したがって、コハク酸が還元剤であり、FADが酸化剤である。

 

 

◆ 3について
3 × 進行中の酸化還元反応の起電力は、Henderson?Hasselbalch の式で表すことができる。
→ 〇 進行中の酸化還元反応の起電力は、ネルンストの式で表すことができる。

 

 

◆ 4,5について
4 〇 電解質の濃度のみが異なる2つの半電池からなる化学電池(濃淡電池)の標準起電力は0V である。

 

5 〇 反応が自発的に進行している化学電池では、カソード(正極)で還元反応が起こる。
還元反応が起こる電極をカソード(正極)、酸化反応が起こる電極をアノード(負極)と呼ぶ。

 

電池とは電位差を作り出すことにより電子の流れと電流を生じさせるものを指し、結果として、電池は電気エネルギー,電気的仕事を発生させる。
起電力とは電流の駆動力であり、化学電池の起電力は両電極間の電位差(電圧)である。
電池の起電力は、酸化反応が起こる電極(負極,アノード)の電位を基準とし、還元反応が起こる電極(正極,カソード)の電位との差で表される。

 

電池の起電力 = (正極の電位) − (負極の電位)

 

標準起電力とは、各半電池の標準電極電位の差である。

 

標準起電力 = (正極の標準電極電位) − (負極の標準電極電位)

 

半電池の標準電極電位とは、基準電極に標準水素電極を用い、気体水素の圧力が1atmで、電池内での酸化還元反応に関わる全ての化学種の活量が1という条件で算出された電極電位である。

 

濃淡電池とは、2つの電極(半電池Lと半電池R)を構成する物質は同じだが、両半電池間で物質の濃度が異なり、両半電池間で物質の活量に差があることから、両電池間に電位差が生じ、電池として機能するものである。

 

以下に濃淡電池の例として、電解質として用いる硫酸亜鉛の濃度のみが異なる2つの亜鉛半電池から成る化学電池を示す。

 

酸化還元反応と化学電池に関する記述のうち…108回薬剤師国家試験問93

 

半電池LはZnSO4の濃度が0.01mol/Lで相対的に低いことから、
電極電位が低く、
Zn → Zn2+ + 2e
という酸化反応が起こるアノード(負極)となる。

 

半電池RはZnSO4の濃度が0.1mol/Lで相対的に高いことから、
電極電位が高く、
Zn2+ + 2e → Zn
という還元反応が起こるカソード(正極)となる。

 

濃淡電池での標準状態は、反応に関わる全ての化学種の活量が1ということから、
両半電池間に濃度差がないことに等しく、両半電池間に活量の差がない。
よって、濃淡電池では、両半電池の標準電極電位は等しく、
半電池Lの標準電極電位=半電池Rの標準電極電位
である。
したがって、濃淡電池の標準起電力は0Vである。

 

 

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