沈殿平衡 溶解度と溶解度積の関係式 薬学 薬剤師国家試験88回問21
第88回薬剤師国家試験 問21
難溶性電解質MX2は水中では、次式の平衡状態で存在する。
溶解度および溶解度積に関する記述の正誤を判定してみよう。
第88回薬剤師国家試験 問21 解答解説
● a〜dの正誤について
が正しい記述である。
難溶性塩の溶解度と溶解度積については、
下記のリンク先を参照
溶解度と溶解度積の関係式 97回問3
難溶性塩MxAyの溶解度をCsat(mol/L)とすると、
MxAyの飽和溶液の沈殿平衡の様子と溶解度積(Ksp)は下図のようになる(ただし、共存イオンの影響等は考慮していない)。青字の数字は各イオン濃度(mol/L)である。
以上のことを本問のMX2の溶解平衡に適用する。
難溶性塩MX2の飽和溶液の溶解平衡は次のように表せる。
MX2の溶解度積Kspについて次式が成り立つ。
本問のMX2の飽和溶液における各イオンの濃度であるが、
本問のMX2溶液はMX2を水に溶かしただけなので、共通イオン効果を考慮しなくてもよいと考えられる。
よって、
MX2の溶解度がCsatであるとすると、
本問のMX2飽和溶液の各イオン濃度は、
反応式より、
以上より、
MX2の飽和溶液の沈殿平衡の様子と溶解度積(Ksp)は下図のようになる。
青字の数字は各イオン濃度(mol/L)である。
★参考外部サイトリンク
沈殿平衡(溶解度と溶解度積)(薬学、これでOK!さん)
● eの正誤について
共通イオン効果とは、難溶性塩の飽和溶液に共通イオンを加えると、難溶性塩の溶解度が著しく減少することである。
共通イオン効果の例として、難溶性塩AgClの沈殿が存在する飽和溶液に、HClを添加してCl−というAgClが解離して生成するイオン(Ag+とCl−)と共通のイオンを増やすと、沈殿しているAgClの溶解度が減少する。
ただ、共通イオンを大過剰に加えると、沈殿の溶解度が増加する場合もある。
AgClの沈殿が存在する飽和溶液にCl−を大過剰に加えると、
という反応が進み、共通イオンであるCl−の増加により、結果としてAgClの沈殿の溶解度が増加する。
なお、異種イオン効果とは、溶液中に沈殿物と無関係なイオンが多量に存在すると、沈殿物の溶解度が増加することである。
異種イオン効果の例として、難溶性塩AgClの沈殿が存在する飽和溶液に、硝酸HNO3や硫酸H2SO4を添加してNO3−とSO4 2−というAgClが解離して生成するイオン(Ag+とCl−)とは異なるイオンを存在させると、沈殿しているAgClの溶解度が増大する。