薬剤師国家試験過去問題集 コントロールドリリース

放出制御型薬物送達システムに関する記述 91回薬剤師国家試験問178

91回薬剤師国家試験 問178
放出制御型薬物送達システムに関する記述について、正しいものはどれか。2つ選びなさい。

 

1 マトリックス型製剤は、膜制御型製剤に比べて一定の薬物放出速度を示す。

 

2 時限放出型製剤は、特定の消化管部位での薬物放出を目的として利用される。

 

3 マトリックスからの薬物放出が Higuchi 式に従う場合、累積薬物放出量は、時間の2乗に対して比例する。

 

4 水に不溶性の高分子で皮膜を施した製剤では、リザーバー内の薬物濃度が飽和状態にある期間は、薬物が一定速度で放出される。

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91回薬剤師国家試験 問178 解答解説

 

◆ 1,3,4について
1 × マトリックス型製剤は、膜制御型製剤に比べて一定の薬物放出速度を示す。
→ 〇 膜制御型製剤は、マトリックス型製剤に比べて一定の薬物放出速度を示す。

 

3 × マトリックスからの薬物放出が Higuchi 式に従う場合、累積薬物放出量は、時間の2乗に対して比例する。
→ 〇 マトリックスからの薬物放出が Higuchi 式に従う場合、累積薬物放出量は、時間の平方根に対して比例する。

 

4 〇 水に不溶性の高分子で皮膜を施した製剤では、リザーバー内の薬物濃度が飽和状態にある期間は、薬物が一定速度で放出される。

 

 

★ 膜制御製剤(リザーバー型放出制御製剤)からの薬物放出速度
膜制御型製剤は、リザーバー型放出制御製剤と呼ばれ、放出制御膜を有する製剤である。
膜制御製剤からの薬物放出について、薬物貯蔵層内、放出制御膜内の薬物濃度が一定に保たれ、かつシンク条件が成立している場合、薬物放出速度は一定に保たれる(0次放出を示す)。
よって、上記の条件下では、膜制御製剤からの累積薬物放出量は、経過時間tに比例する。

 

膜制御型製剤とマトリックス型製剤の薬物放出速度 91回薬剤師国家試験問178

 

関連問題
・リザーバー型経皮吸収製剤の累積薬物放出量と時間の関係 101回問179

 

 

★ マトリックス型放出制御製剤からの薬物放出速度
マトリックス型製剤は、放出制御膜が無く、基剤から成るマトリックス中に主薬が均一に分散された製剤であり、マトリックスが放出制御能を有する。
本問では、マトリックス型放出制御製剤のうち、投与後もマトリックス構造が維持されたまま、マトリックス内を薬物が拡散することにより放出されるタイプの製剤を例に説明する。このタイプの製剤の例として、不溶性マトリックス型経口投与製剤やマトリックス型経皮吸収製剤が挙げられる。
このタイプのマトリックス型製剤では、薬物のマトリックス内の拡散が薬物溶出の律速であり、薬物が放出されていくのに伴い、マトリックス内の薬物が残存する層が後退していくので、投与からの経過時間が長くなるほど、薬物が放出されるまでにマトリックス内を拡散する距離が長くなる。
よって、このタイプの製剤では、投与からの時間が長くなるほど、単位経過時間当たりの薬物放出量が低下し、
時間tに対して累積薬物放出量をプロットすると、しだいに傾きが緩やかになる右上がりの曲線となる。

 

膜制御型製剤とマトリックス型製剤の薬物放出速度 91回薬剤師国家試験問178

 

また、このタイプのマトリックス型放出制御製剤では、薬物放出は次のHiguchi(ヒグチ)式に従う。
Higuchi(ヒグチ)式は以下の通り。

 

Q = [D・(2A−Cs)Cs・t]1/2

 

Q:単位面積当たりの累積薬物放出量 A:マトリックス中の薬物の全濃度
D:マトリックス中の薬物の拡散係数 Cs:薬物の溶解度
t:時間

 

よって、薬物放出がHiguchi(ヒグチ)式に従うとき、
時間tまでの単位面積当たりの累積薬物放出量は、
時間tの平方根(√t)に比例する。

 

関連問題
・マトリックス型製剤からの薬物放出パターン 106回問49

 

・不溶性マトリックス型製剤からの累積薬物放出量と時間との関係 98回問179

 

 

◆ 2について
2 〇 時限放出型製剤は、特定の消化管部位での薬物放出を目的として利用される。

 

時限放出型製剤は、服用してから一定時間経過後に薬物が放出される製剤である。
これは、症状の現れやすい時間帯での薬物放出や、特定の消化管部位での薬物放出を目的として利用される。

 

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