ジアゼパムのpH7.0における注射筒基材への吸着 99回薬剤師国家試験問197

第99回薬剤師国家試験 問197
25℃におけるジアゼパム水溶液(20μg/mL)の注射筒基材への吸着はpH 依存性を示す。pH 3.2におけるジアゼパムの注射筒基材への吸着が2.3μg/mg であった。pH 7.0における吸着に最も近い値(μg/mg)はどれか。1つ選びなさい。ただし、ジアゼパムのpKa=3.5、吸着によるジアゼパムの濃度変化は無視できるものとし、吸着は分子形薬物濃度に比例するものとする。また、log2=0.30、log3=0.48とする。

 

1 0.1
2 2.0
3 3.5
4 5.5
5 7.0

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第99回薬剤師国家試験 問197 解答解説
正解は5の7.0である。

 

問題文より、「25℃におけるジアゼパム水溶液(20μg/mL)の注射筒基材への吸着はpH 依存性を示す」,「吸着は分子形薬物濃度に比例する」とある。
これより、溶液のpHが変化するのに伴いジアゼパムの分子形濃度が上昇すると、ジアゼパムの注射筒基材への吸着が増えると考えられる。

 

弱塩基性薬物のジアゼパムでは、pHが上昇すると分子形濃度が上昇して注射筒基材への吸着が増えると考えられる(ただし、ジアゼパムの飽和溶液でないという条件付きで)。

 

本問では、pH 3.2におけるジアゼパムの注射筒基材への吸着が2.3μg/mg であることを参考に、pH 7.0における吸着(μg/mg)を求める。
それには、pH 3.2の時のジアゼパムの分子形濃度と、pH7.0の時のジアゼパムの分子形濃度の比を計算すれば良い。

 

pH3.2の時の分子形の存在割合と、pH7.0の時の分子形の存在割合をそれぞれ計算する。
この計算には弱塩基性物質のヘンダーソン・ハッセルバルヒの式を用いる。
ジアゼパムがなり得る化学種は分子形(B:)と陽イオン形(BH+)の2種のみと仮定する。

 

問題文よりジアゼパムの共役酸(陽イオン形)のpKaは3.5である。

 

・pH3.2の時の分子形の存在割合
弱塩基性物質のヘンダーソン・ハッセルバルヒの式より、

 

ジアゼパムのpH7.0における注射筒基材への吸着 99回薬剤師国家試験問197

 

これより、pH3.2の時の分子形(B:)のジアゼパム全体に対する存在割合は、
1/(1+2)×100%=33.3%

 

 

・pH7.0の時の分子形の存在割合
弱塩基性物質のヘンダーソン・ハッセルバルヒの式より、

 

ジアゼパムのpH7.0における注射筒基材への吸着 99回薬剤師国家試験問197

 

これより、pH3.2の時の分子形(B:)のジアゼパム全体に対する存在割合は、
3000/(3000+1)×100%≒100%

 

以上より、ジアゼパムについて、pH 3.2の時の分子形濃度と、pH7.0の時の分子形濃度の比は次のように計算できる。

 

ジアゼパムのpH7.0における注射筒基材への吸着 99回薬剤師国家試験問197

 

よって、ジアゼパムについて、pH7.0の時の分子形濃度はpH3.2の時の分子形濃度の3倍だと考えられる。

 

したがって、
pH7.0でのジアゼパムの注射筒への吸着量
=(pH3.2でのジアゼパムの注射筒への吸着量)×3
=2.3μg/mg×3
=6.9μg/mg

 

 

★参考外部サイトリンク
pHおよび解離定数(yakugaku labさん)

 

★他サイトさんの解説へのリンク
99回問197(e-RECさん)

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