ラモトリギンのグルクロン酸抱合 109回薬剤師国家試験問210,211
109回薬剤師国家試験 問210−211
43歳男性。身長170 cm、体重75 kg。双極性障害で処方1の薬剤を服用していた。抑うつ症状が再燃してきたため、今回、処方2が追加された処方箋と以下の検査値が記載された情報用紙を持って患者が来局した。
問210(物理・化学・生物)
バルプロ酸やラモトリギンは、どちらもグルクロン酸転移酵素で代謝される。ラモトリギンのグルクロン酸抱合体の構造として正しいのはどれか。1つ選びなさい。
問211(実務)
この処方に関し、医師へ疑義照会する内容として、適切なのはどれか。1つ選びなさい。
1 バルプロ酸Na徐放錠200 mg の投与量を、1日200 mgに減量する。
2 バルプロ酸Na徐放錠200 mg の投与量を、1日1200 mgに増量する。
3 ラモトリギン錠の投与量を、1日50 mgに増量する。
4 ラモトリギン錠の用法を、朝食後2時間以降投与に変更する。
5 ラモトリギン錠の用法を、隔日投与にする。
109回薬剤師国家試験 問210(物理・化学・生物) 解答解説
ラモトリギンのグルクロン酸抱合体の構造として正しいのは、
選択肢2である。
グルクロン酸抱合は、主に小胞体膜に存在するグルクロン酸転移酵素が触媒として作用し、UDP−α−D−グルクロン酸を補酵素とする(UDPとはウリジン二リン酸のこと)。
グルクロン酸抱合を受ける物質の構造中の、ヒドロキシ基,アミノ基,カルボキシ基,チオール基などの供与可能な非共有電子対を有する官能基が、UDP−α−D−グルクロン酸のグルクロン酸の1位炭素に求核攻撃し、
付加すると同時にUDPが脱離し、グルクロン酸抱合体が生成する。
よって、グルクロン酸抱合はSN2反応であるといえる。
グルクロン酸抱合反応はSN2反応であることから、グルクロン酸誘導体の立体に着目すると、UDP−α−D−グルクロン酸はα−アノマー(α体)であるが、SN2反応は立体反転を起こすので、グルクロン酸抱合体はβ−アノマー(β体)となる。
環状糖において、1位炭素の置換基と5位炭素の置換基が、
環に対して互いに逆側にあるものがα−アノマーであり、
環に対して互いに同じ側にあるものがβ−アノマーである。
109回薬剤師国家試験 問211(実務) 解答解説
双極性障害で処方1の薬剤を服用していた。
抑うつ症状が再燃してきたため、今回、処方2が追加された処方箋と以下の検査値が記載された情報用紙を持って患者が来局した。
この処方に関し、医師へ疑義照会する内容として、適切なのは、
選択肢5の「ラモトリギン錠の用法を、隔日投与にする」である。
ラモトリギン(ラミクタール)は、主としてグルクロン酸転移酵素が触媒として作用するグルクロン酸抱合により代謝される。よって、ラモトリギンの用法用量を決める際は、他剤との併用により、ラモトリギンのグルクロン酸抱合の阻害,もしくは,促進の有無を考慮に入れる必要がある。
処方1のバルプロ酸は、グルクロン酸抱合で代謝されるため、
ラモトリギンとバルプロ酸Naを併用すると、グルクロン酸抱合が競合し、
ラモトリギンの消失半減期が約2倍に延長するとの報告がある。
そのため、成人患者へのラモトリギン錠の新規処方で、バルプロ酸Naと併用する場合、
最初の2週間はラモトリギン25mgを隔日投与するよう添付文書で定められている。
また、ラモトリギンのグルクロン酸抱合に対する影響が明らかでない薬剤と併用する場合も、バルプロ酸Naを併用する場合の用法及び用量に従うこととされている。
ラモトリギン錠(ラミクタール)の添付文書上の用法用量は以下の通り。
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