90回薬剤師国家試験問15 亜硝酸(HNO2)による核酸塩基の変換
90回薬剤師国家試験 問15
次の反応は、含水溶媒中での亜硝酸(HNO2)による核酸塩基の変換に関するものである。この反応に関する次の記述の正誤を判定してみよう。
a この反応で、シトシンがチミンに変換される。
b 亜硝酸が反応するのは、Aの段階である。
c Bの段階で、酸素分子が反応する。
d Bの段階で、窒素ガスが発生する。
e この反応で生じる核酸塩基は、RNAの構成塩基である。
90回薬剤師国家試験 問15 解答解説
◆ a,eについて
a × この反応で、シトシンがチミンに変換される。
→ 〇 この反応で、シトシンがウラシルに変換される。
e 〇 この反応で生じる核酸塩基は、RNAの構成塩基である。
ウラシルはRNAの構成塩基である。
なお、チミンの構造は下記の通り。
チミンはDNAの構成塩基である。
◆ bについて
b 〇 亜硝酸が反応するのは、Aの段階である。
亜硝酸は酸性条件下で分解されてニトロソニウムイオン(+NO)となる。
Aの段階は、シトシンの芳香族第一アミンとニトロソニウムイオン(+NO)の反応であり、芳香族第一級N-ニトロソ化合物が生成するが、これは脱水して、芳香族ジアゾニウム塩が生成する。
アミンの酸性条件下での亜硝酸塩との反応は下記のリンク先を参照
アミンの酸性条件下での亜硝酸ナトリウムの反応 92回問7
◆ c,dについて
c × Bの段階で、酸素分子が反応する。
→ 〇 Bの段階で、水分子が反応する。
d 〇 Bの段階で、窒素ガスが発生する。
Bの段階は、芳香族ジアゾニウム塩に対して水分子が求核攻撃することによる求核置換反応が起こり、ウラシルのエノール形が生成する。この際、芳香族ジアゾニウム塩の分解に伴いN2(窒素ガス)が発生する。
ウラシルのエノール形は、ケト−エノール互変異性によりウラシルのケト形との間で平衡となる。
一般に、ケト−エノール互変異性の平衡はケト形の方に大きく傾く。