91回薬剤師国家試験問14 ウシから得られたインスリン
91回薬剤師国家試験 問14
ウシから得られた日本薬局方医薬品インスリンは次の化学構造で表される。
本品に関する記述の正誤を判定してみよう。
a ウシインスリンの3つのジスルフィド結合は、いずれも2本のペプチド鎖を互いに結合させている。
b ジスルフィド結合は、メルカプト基の脱水縮合反応で形成される。
c ジスルフィド結合を完全に切断して得られる鎖長が短い方のペプチドをEdman分解すると、最初にグリシンが切断される。
d ジスルフィド結合を完全に切断して得られる鎖長が長い方のペプチドのC末端アミノ酸は、アラニンである。
e ジスルフィド結合を完全に切断して得られる鎖長が長い方のペプチドは、塩基性アミノ酸残基を含む。
91回薬剤師国家試験 問14 解答解説
◆ aについて
a × ウシインスリンの3つのジスルフィド結合は、いずれも2本のペプチド鎖を互いに結合させている。
ウシインスリンの3つのジスルフィド結合のうち、2つは2本のペプチド鎖を互いに結合させているが、1つ短鎖内で形成されている。
◆ bについて
b × ジスルフィド結合は、メルカプト基の脱水縮合反応で形成される。
ジスルフィド結合は、2つのメルカプト基(チオール基)の脱水素縮合で形成される。
この脱水素縮合は酸化反応ともいえる。
ジスルフィドの形成については、下記のリンク先を参照
チオール(メルカプト)の酸化でジスルフィド 第87回問11d
◆ cについて
c 〇 ジスルフィド結合を完全に切断して得られる鎖長が短い方のペプチドをEdman分解すると、最初にグリシンが切断される。
Edman分解(フェニルイソチオシアネート法)はタンパク質やペプチドのN末端から順にアミノ酸を切り出してアミノ酸配列を同定する方法である。
ウシインスリンの鎖長が短い方のペプチドのN末端はグリシンなので、これをEdman分解すると最初にグリシンが切断される。
◆ d,eについて
d 〇 ジスルフィド結合を完全に切断して得られる鎖長が長い方のペプチドのC末端アミノ酸は、アラニンである。
e 〇 ジスルフィド結合を完全に切断して得られる鎖長が長い方のペプチドは、塩基性アミノ酸残基を含む。
鎖長が長い方のペプチドは、塩基性アミノ酸残基として、ヒスチジン(His),アルギニン(Arg),リシン(Lys)を含む。