薬剤師国家試験過去問題集 DDSの総合問題

DDS製剤に関する次の記述の正誤  84回薬剤師国家試験問179

84回薬剤師国家試験 問179
DDS製剤に関する次の記述の正誤について、正しいものはどれか。2つ選びなさい。

 

a ブセレリン酢酸塩の経鼻投与製剤は、薬物の全身循環血への吸収を目的として用いられる。

 

b デキサメタゾンパルミチン酸エステルを含有させたリピドマイクロスフィア製剤は、薬物の作用持続化を目的として用いられる。

 

c ニトログリセリン貼付剤は、狭心症発作時の救急処置に用いられる。

 

d リュープロレリン酢酸塩を含有させた乳酸・グリコール酸共重合体を用いたマイクロカプセルの注射剤は、腫瘍部位への標的化を目的として用いられる。

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84回薬剤師国家試験 問179 解答解説

 

◆ aについて
a 〇 ブセレリン酢酸塩の経鼻投与製剤は、薬物の全身循環血への吸収を目的として用いられる。

 

ブセレリン酢酸塩の点鼻薬(スプレキュア点鼻液)は、Gn-RH誘導体のブセレリンの全身循環血への吸収を目的とした点鼻薬である。
点鼻液として鼻腔内に噴霧され、鼻粘膜から全身循環血に吸収された場合、肝臓での初回通過効果を受けないこと,経口投与ではバイオアベイラビリティが低い薬物の投与経路となり得ること等の理由から、薬物の全身循環への送達に点鼻が選択されることがある。

 

薬物の全身循環への送達を目的とした点鼻薬として、以下のものが挙げられる。
・デスモプレシン点鼻:中枢性尿崩症治療薬
・ブセレリン点鼻(スプレキュア点鼻液):Gn-RH誘導体の点鼻薬
・ナファレリン点鼻:Gn-RH誘導体の点鼻薬
・グルカゴン点鼻(バクスミー点鼻粉末):低血糖治療薬
・スマトリプタン点鼻(イミグラン点鼻):片頭痛治療薬

 

一方、ステロイド点鼻薬は、鼻粘膜に局所的に作用し、鼻炎を治療することを目的としたものであり、全身循環への吸収を目的としたものではない。

 

関連問題
べクロメタゾンプロピオン酸エステルの鼻腔内投与製剤 92回問178の1

 

 

◆ bについて
b × デキサメタゾンパルミチン酸エステルを含有させたリピドマイクロスフィア製剤は、薬物の作用持続化を目的として用いられる。
→ 〇 デキサメタゾンパルミチン酸エステルを含有させたリピッドマイクロスフェア製剤は、炎症部位への指向性の向上(ターゲティング)を目的とする。

 

★ デキサメタゾンパルミチン酸エステル:リピッドマイクロスフェア製剤化の目的
デキサメタゾンパルミチン酸エステルのリピッドマイクロスフェア製剤(リポ化製剤)として、リメタゾン注がある。
リピッドマイクロスフェアとは、水中に植物油を界面活性剤のレシチンで乳化したo/w型エマルションであり、分散媒である注射用水に、植物油が分散相として分散している。リメタゾン注では、デキサメタゾンパルミチン酸エステルをダイズ油に溶解し、水中にその油滴を卵黄レシチンで乳化している。
リピッドマイクロスフェアは、投与後にマクロファージなどの免疫細胞に貪食される性質があり、炎症部位、血管損傷部位、動脈硬化部位などへ集積する特性があるので、これらの部位に薬物を送達する受動的ターゲティングに利用される。
リメタゾン注は、関節リウマチの治療薬であり、ステロイドのデキサメタゾンパルミチン酸エステルを炎症部位に送達する受動的ターゲティング製剤である。

 

★ デキサメタゾンパルミチン酸エステル:プロドラッグ化の目的
デキサメタゾンパルミチン酸エステルは、水溶性のデキサメタゾンをパルミチン酸エステルとすることで、脂溶性が高められており、生体内のエステラーゼにより緩徐に加水分解を受け活性代謝物であるデキサメタゾンになり持続的な抗炎症作用を示す。
よって、デキサメタゾンをデキサメタゾンパルミチン酸エステルとするプロドラッグ化の目的は、作用の持続化であるといえる。

 

 

◆ cについて
c × ニトログリセリン貼付剤は、狭心症発作時の救急処置に用いられる。

 

ニトログリセリン貼付剤は、主薬のニトログリセリンを皮膚の血管から吸収させて全身循環血に送達する経皮吸収製剤であり、狭心症発作の予防を目的とした製剤である。
経皮吸収製剤は、投与後の血中濃度の立ち上がりが緩やかであるので、発作の寛解を目的とした治療には不適である。
狭心症発作の寛解には、ニトログリセリンや硝酸イソソルビドの舌下錠や舌下スプレー,口腔内スプレー等が用いられる。

 

関連問題
ニトログリセリン貼付剤の放出制御機構 88回問178b

 

 

◆ dについて
d × リュープロレリン酢酸塩を含有させた乳酸・グリコール酸共重合体を用いたマイクロカプセルの注射剤は、腫瘍部位への標的化を目的として用いられる。

 

→ 〇 リュープロレリン酢酸塩を含有させた乳酸・グリコール酸共重合体を用いたマイクロカプセルの注射剤は、作用の持続化を目的として用いられる。

 

詳細は下記のリンク先を参照
リュープリン注の特徴と投与方法  86回問179b

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