薬剤師国家試験過去問題集 DDSの総合問題

DDS製剤とその目的 93回薬剤師国家試験問178

93回薬剤師国家試験 問178
DDS製剤とその目的について、正しいものはどれか。2つ選びなさい。

 

1 硝酸イソソルビドの経皮吸収型製剤:主薬の吸収促進
2 ポリエチレングリコールで化学修飾したインターフェロンの注射剤:主薬の作用時間延長
3 アムホテリシンBの注射用リポソーム製剤:病巣部位への移行性の向上
4 デキサメタゾンパルミチン酸エステルを含有させたリピッドマイクロスフェア製剤:腫瘍組織への指向性の向上

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93回薬剤師国家試験 問178 解答解説

 

正解は2と3である。
2 〇 ポリエチレングリコールで化学修飾したインターフェロンの注射剤:主薬の作用時間延長
3 〇 アムホテリシンBの注射用リポソーム製剤:病巣部位への移行性の向上

 

◆ 1 硝酸イソソルビドの経皮吸収型製剤について
硝酸イソソルビドは、狭心症・心筋梗塞などの虚血性心疾患の治療薬として多種多様な製品が販売されており、
その中の1として、虚血性心疾患の発作の予防を目的とした経皮吸収型製剤がある。
経皮吸収製剤とは、薬物を皮膚に投与することにより、全身循環血に吸収させる製剤である。
経皮吸収製剤は次のような利点がある。
・長時間、製剤から徐々に薬物が放出されるため、薬物の血中濃度が一定に維持され、薬効が持続する。
・皮膚から直接全身循環に入るため、肝臓での初回通過効果を回避できる。
・副作用が現れた時、貼付剤を剥がせばすぐに薬物の放出を中断できる。
・経口投与で問題となる消化管への副作用を回避できる。
・貼るだけで投与できるので、小児や高齢者にも使いやすい。
・貼付されていることを見れば服薬確認できるので、服薬忘れや重複投与を防ぎやすい。

 

硝酸イソソルビドの経皮吸収製剤であるフランドルテープは、次のような特徴がある(以下、インタビューフォームより)。
「薬物放出システムとして、結晶レジボアシステムを採用している。このシステムは、硝酸イソソルビド分子を粘着剤層に溶解させるとともにその結晶を貯留層として分散・共存させ、皮膚に吸収された硝酸イソソルビド分子を順次結晶から補給することによって、粘着剤と皮膚接触表面の硝酸イソソルビド濃度を長時間一定に保つように設計されたものである。
フランドルテープは上記の製剤学的特性を有し、狭心症、心筋梗塞(急性期を除く)及びその他の虚血性心疾患に対し、24時間又は 48時間ごとの貼付でその有用性が確認されている。」

 

 

◆ 2 ポリエチレングリコールで化学修飾したインターフェロンの注射剤について
薬物をポリエチレングリコールで修飾すること(PEG化)による効果として、親水性の向上、抗体や分解酵素に対する安定性の向上、抗原性の低下による細網内皮系免疫細胞による認識と貪食の抑制、粒子サイズの拡大により腎排泄の抑制といったことが挙げられる。
以上のことから、薬物のPEG化により、血中滞留性の向上、作用の持続化、受動的ターゲティングが図れる。

 

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◆ 3 アムホテリシンBの注射用リポソーム製剤について
リポソームの脂質膜に、脂溶性の抗真菌薬であるアムホテリシンBを封入した注射剤として、アムビゾーム点滴静注用がある。
真菌の感染部位は、血管透過性が亢進しているので、正常組織に比べて高分子の移行性が高い。
そのため、高分子のリポソームにアムホテリシンBを封入して投与することで、選択的に感染部位に薬剤を到達させることができる。
よって、アムビゾーム点滴静注用は、受動的ターゲティング製剤であり、真菌感染症に対するアムホテリシンBの治療効率を高め、腎障害等の副作用を抑制すると考えられている。

 

 

◆ 4 デキサメタゾンパルミチン酸エステルを含有させたリピッドマイクロスフェア製剤について
デキサメタゾンパルミチン酸エステルのリピッドマイクロスフェア製剤(リポ化製剤)として、リメタゾン注がある。
リピッドマイクロスフェアとは、水中で植物油を界面活性剤のレシチンで乳化したo/w型エマルションであり、分散媒である注射用水に、植物油が分散相として分散している。リメタゾン注では、デキサメタゾンパルミチン酸エステルをダイズ油に溶解し、水中にその油滴を卵黄レシチンで乳化している。
リピッドマイクロスフェアは、投与後にマクロファージなどの免疫細胞に貪食される性質があり、炎症部位、血管損傷部位、動脈硬化部位などへ集積する特性があるので、これらの部位に薬物を送達する受動的ターゲティングに利用される。
リメタゾン注は、関節リウマチの治療薬であり、ステロイドのデキサメタゾンパルミチン酸エステルを炎症部位に送達する受動的ターゲティング製剤である。
なお、デキサメタゾンパルミチン酸エステルは、水溶性のデキサメタゾンをパルミチン酸エステルとすることで、脂溶性が高められており、生体内のエステラーゼにより緩徐に加水分解を受け活性代謝物であるデキサメタゾンになり持続的な抗炎症作用を示す。

 

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