EPR効果とは 101回薬剤師国家試験問180
101回薬剤師国家試験 問180
EPR(Enhanced Permeability and Retention)効果の説明として、正しいのはどれか。1つ選びなさい。
1 腫瘍組織で活性の高い酵素によって薬物が代謝活性化を受け、腫瘍組織特異的に効果が発現する。
2 腫瘍組織特異的なトランスポーターの利用により、薬物の腫瘍組織への移行性と滞留性が向上する。
3 薬物を含む微粒子がマクロファージに貪食され、薬物が長時間血液中に滞留する。
4 アンギオテンシンの併用投与により、腫瘍組織の血管透過性が選択的に上昇し、薬物の移行性が向上する。
5 腫瘍組織では、通常組織と比較して毛細血管の透過性が亢進し、リンパ管が未発達なので、薬物を含む微粒子の腫瘍組織への移行性と滞留性が向上する。
101回薬剤師国家試験 問180 解答解説
EPR(Enhanced Permeability and Retention)効果の説明として、
正しいのは下記の選択肢5の記述である。
5 〇 腫瘍組織では、通常組織と比較して毛細血管の透過性が亢進し、リンパ管が未発達なので、薬物を含む微粒子の腫瘍組織への移行性と滞留性が向上する。
腫瘍組織では、血管新生と血管透過性が亢進していることから、血管から組織へ高分子が浸透しやすい。
さらに、腫瘍組織では、リンパ管が未発達であることから、組織からリンパ管へ物質が回収されにくく、物質が組織に集積しやすい。
このように、腫瘍組織は、正常組織と比べて高分子の移行性と滞留性が高い特性をEPR(Enhanced Permeability and Retention)効果という。
なお、英語のPermeationは透過性、Retentionは保持を意味する。
EPR効果を利用すれば、腫瘍組織に選択的に抗がん剤を集積させることができる。
このように生体内の生理学的・解剖学的特性を受動的に利用するターゲティングを、受動的ターゲティングと呼ぶ。
選択肢4の「アンギオテンシンの併用投与により、腫瘍組織の血管透過性が選択的に上昇し、薬物の移行性が向上する」という記述は昇圧化学療法の説明である
正常組織では、アンギオテンシンUを投与すると血管が収縮し、血流量が低下する。
一方、腫瘍組織では、アンギオテンシンUに対する血管収縮性に乏しい。
そのため、アンギオテンシンUを投与すると、腫瘍組織の血流が特異的に増加する。
この生体反応を利用し、腫瘍組織への抗がん剤の流入量を選択的に増大させる化学療法を、昇圧化学療法と呼ぶ。
昇圧化学療法も受動的ターゲティングである。
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