薬剤師国家試験過去問題集 ターゲティング

図に示す受動的ターゲティングを利用した製剤はどれか 106回薬剤師国家試験問55

106回薬剤師国家試験 問55
図に示す受動的ターゲティングを利用した製剤はどれか。1つ選びなさい。

 

106回薬剤師国家試験問55 図に示す受動的ターゲティングを利用した製剤はどれか

 

1 ドキシル注20mg(ドキソルビシン塩酸塩)
2 パルクス注5ng(アルプロスタジル)
3 オンパットロ点滴静注2mg/mL(パチシランナトリウム)
4 アムビゾーム点滴静注用50mg(アムホテリシンB)
5 リメタゾン静注2. 5mg(デキサメタゾンパルミチン酸エステル)

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106回薬剤師国家試験 問55 解答解説

 

受動的ターゲティングとは、生体内の生理学的・解剖学的特性を受動的に利用するターゲティングである。

 

106回薬剤師国家試験問55 図に示す受動的ターゲティングを利用した製剤はどれか

 

図に示す受動的ターゲティングを利用した製剤は、
1のドキシル注20mgである。
ドキシル注は、ポリエチレングリコール修飾リポソーム(PEG化リポソーム)の水相に、抗がん剤のドキソルビシン塩酸塩を封入した製剤である。

 

リポソームとは、脂質二分子膜からなる閉鎖小胞であり、脂質膜には脂溶性薬物を含むことができ、中の水相には水溶性薬物を含むことができる担体である。
表面をポリエチレングリコール(PEG)で修飾されたリポソームは、親水性が高まり、抗原性が低下して細網内皮系免疫細胞による認識と貪食が抑制され、粒子サイズの拡大により腎排泄は抑制されるので、血中滞留性が向上している。
なお、PEG化リポソームは、細網内皮系に異物として認識されにくいことから、ステルスリポソームと呼ばれる。
腫瘍細胞は正常組織に比べ、血管新生と血管透過性が亢進しており、
リンパ管が未発達なので、高分子の移行性と滞留性が高い。これをEPR効果と呼ぶ。
血中滞留性の高いPEG修飾リポソームに抗がん剤を封入して投与すると、EPR効果により、腫瘍組織に選択的に抗がん剤を集積させることができる。
これは、EPR効果を利用した受動的ターゲティングである。

 

関連問題
・リポソームに関する正誤問題 98回問180

 

・EPR効果とは 101回問180

 

以下、他の選択肢について

 

3のオンパットロ点滴静注は、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの治療薬である。
トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーは、変異型および野生型のトランスサイレチンタンパク質(TTRタンパク質)からなるアミロイド線維の細胞外蓄積が原因とされている。パチシランナトリウムは、TTRタンパク質のmRNAを分解する作用を持つsmall interfering RNA(siRNA)という合成二本鎖オリゴヌクレオチドである。
オンパットロ点滴静注は、TTRタンパク質の主な合成場所である肝臓へ薬物が送達されることを目的に、脂質ナノ粒子にパシチランナトリウムを封入した製剤である。
パシチランナトリウムにより肝細胞のTTR mRNAが分解されれば、血清中TTRタンパク質が減少し、組織へのアミロイド沈着は抑制される。
なお、脂質ナノ粒子(Lipid Nanoparticle:LNP)は、核酸医薬を送達するキャリアーとして有用であり、コロナウイルスワクチンの1種であるmRNAワクチンにも用いられている。

 

2のパルクス注5ng(アルプロスタジル注)と5のリメタゾン静注2. 5mg(デキサメタゾンパルミチン酸エステル)は、リピッドマイクロスフェア製剤である。
リピッドマイクロスフェアは、投与後にマクロファージなどの免疫細胞に貪食される性質があり、炎症部位、血管損傷部位、動脈硬化部位などへ集積する特性があるので、これらの部位に薬物を送達する受動的ターゲティングに利用される。
詳細は下記のリンク先を参照
・リピッドマイクロスフェア製剤のアルプロスタジル注射液 102回問280,281

 

・デキサメタゾンパルミチン酸エステルを含有させたリピッドマイクロスフェア 93回問178の4

 

 

4のアムビゾーム点滴静注用50mgはリポソーム製剤であるが、真菌感染症,および,リーシュマニア症の治療薬である。
詳細は下記のリンク先を参照
・アムホテリシンBの注射用リポソーム製剤 93回問178の3

 

 

★ 他サイトさんの解説リンク
106回問55(e-RECさん)

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