安定形結晶と準安定形結晶の溶解曲線 105回薬剤師国家試験問179

105回薬剤師国家試験 問179
ある非電解質性薬物の安定形結晶と準安定形結晶を、固相が常に存在する状態でそれぞれ一定温度の水に溶解したところ、図に示す薬物濃度―時間曲線T及びUが得られた。この薬物の溶解挙動に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。

 

結晶の溶解曲線と過飽和 105回薬剤師国家試験問179

 

1 曲線Tは、安定形結晶の溶解曲線を示している。
2 曲線Uのアの付近では、固相の大部分が安定形結晶として存在する。
3 曲線Uのイの付近では、薬物が過飽和状態で溶解している。
4 曲線Uのイの付近では、固相の大部分が準安定形結晶として存在する。
5 安定形結晶の溶解度は、約6 mg/mLである。

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105回薬剤師国家試験 問179 解答解説

 

◆ 1について
1 〇 曲線Tは、安定形結晶の溶解曲線を示している。

 

結晶の溶解曲線と過飽和 105回薬剤師国家試験問179

 

結晶多形において、
安定形とは化学ポテンシャルが最も小さい結晶であり、
安定形以外の結晶は準安定形とされる。

 

一般に、安定形は準安定形に比べて融点が高く、溶解度が低い。
言い換えると、準安定形は安定形に比べて融点が低く、溶解度が高い。

 

よって、
曲線Tは安定形結晶の溶解曲線であり、
曲線Uは準安定形の溶解曲線であると考えられる。

 

 

◆ 5について
5 〇 安定形結晶の溶解度は、約6 mg/mL である。

 

溶質の溶解度とは飽和溶液の溶質濃度であるが、
それは溶質の固相が存在する溶液が溶解平衡に達した時の溶質濃度である。
本問の溶液では薬物の固相が常に存在しており、溶解曲線Tはイの所から薬物濃度が一定となっている。
よって、イの所では溶液は溶解平衡に達している考えられ、その薬物濃度約6 mg/mLが溶解度である。

 

 

◆ 2,3,4について

 

結晶の溶解曲線と過飽和 105回薬剤師国家試験問179

 

2 × 曲線Uのアの付近では、固相の大部分が安定形結晶として存在する。
→ 〇 曲線Uのアの付近では、固相の大部分が準安定形結晶として存在する。

 

3 × 曲線Uのイの付近では、薬物が過飽和状態で溶解している。
→ 〇 曲線Uのイの付近では、薬物が飽和状態で溶解している。

 

4 × 曲線Uのイの付近では、固相の大部分が準安定形結晶として存在する。
→ 〇 曲線Uのイの付近では、固相の大部分が安定形結晶として存在する。

 

溶液中のある溶質が、その温度の溶解度以上に溶解している状態を過飽和と呼ぶ。
準安定形結晶の溶解度は安定形結晶に比べて高いため、
準安定形の溶解曲線は曲線Uのアで示すように過飽和を示す。

 

水に溶解した準安定形結晶は時間経過とともに安定形結晶へと転移する。
安定形結晶の溶解度は低いため、
安定形結晶への転移に伴い過飽和状態で溶解していた薬物は析出し、
溶液の薬物濃度は低下する。
固相においては、準安定形で溶解していた薬物が安定形として析出してくるので、時間経過とともに固相は安定形結晶の割合が増えていく。
曲線Uのイの付近では、曲線Tの安定形結晶の溶解曲線と重なっているが、
これは固相の大部分が安定形結晶として存在していることを示す。

 

 

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