固形製剤の医薬品の分子集合体の性質 103回薬剤師国家試験問174
103回薬剤師国家試験 問174
固形製剤中における医薬品の分子集合体の性質に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 結晶多形間では、結晶構造は異なるが真密度は等しい。
2 医薬品の結晶形は変化せず結晶表面に水分が吸着したものを水和物という。
3 非晶質(アモルファス)状態の医薬品を高湿度下に保存したとき、水分の収着によって結晶化することがある。
4 シクロデキストリンによる包接化には、医薬品の安定性を改善する効果はない。
5 医薬品を分子状態で水溶性高分子に分散させた粉体から医薬品を溶出させるとき、医薬品のみかけの溶解度が過飽和を示すことがある。
103回薬剤師国家試験 問174 解答解説
◆ 1について
1 × 結晶多形間では、結晶構造は異なるが真密度は等しい。
→ 〇 結晶多形間では、結晶構造が異なるので真密度は異なる。
結晶多形間では、互いに原子や分子の配列が異なることから、
化学ポテンシャル、融点、溶解度、真密度などが異なる。
関連問題
安定形結晶と準安定形結晶の溶解度 95回問170a
◆ 2について
2 × 医薬品の結晶形は変化せず結晶表面に水分が吸着したものを水和物という。
ある成分が溶液から結晶化する際、溶媒分子を取り込んで安定な結晶を形成することがある。
この結晶を溶媒和物と呼び、溶媒分子が水分子の場合を水和物と呼ぶ。
一般に、無水物の結晶は水和物よりも水に対する溶解度が高く、溶解速度が大きい。
◆ 3について
3 〇 非晶質(アモルファス)状態の医薬品を高湿度下に保存したとき、水分の収着によって結晶化することがある。
非晶質は、粒子を構成する分子や原子が不規則に配列したものであり、結晶に比べて高いエネルギー状態にあり、不安定である。
非晶質は熱力学的に平衡状態ではなく、温度変化や吸湿などで安定な結晶形に変化することがある。
なお、一般に、非晶質は結晶形に比べて溶解度が高い。
関連問題
・無晶形(非晶質)のエネルギー状態 90回問167a
◆ 4について
4 × シクロデキストリンによる包接化には、医薬品の安定性を改善する効果はない。
シクロデキストリンによる包接化には、医薬品の化学的安定性を高める効果がある。
また、疎水性の薬物をシクロデキストリンで包接化することで、水に可溶化することもできる。
◆ 5について
5 〇 医薬品を分子状態で水溶性高分子に分散させた粉体から医薬品を溶出させるとき、医薬品のみかけの溶解度が過飽和を示すことがある。
薬物が担体となる高分子に分散された粉体を固体分散体と呼ぶ。
固体分散体製剤の目的の多くは、薬物を非晶質化することで溶解性を改善することであるが、
非晶質の溶解度は過飽和を示すことがある。
過飽和とは物質が溶解度以上に溶けることである。
また、一般に非晶質は不安定であるが、固体分散体とすることで非晶質の安定性を高めることができる。
固体分散体製剤の担体高分子として、ヒプロメロース、ポリビニルピロリドン、メタクリル酸−メタクリレートコポリマーなどがある。
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