シクロデキストリンによる包接化合物 アルプロスタジルアルファデクス 90回薬剤師国家試験問10
90回薬剤師国家試験 問10
日本薬局方医薬品アルプロスタジルアルファデクスは、プロスタグランジンE1とα-シクロデキストリンから成る包接化合物である。本品に関する記述の正誤を判定してみよう。
a 主にイオン結合により形成された包接化合物である。
b 包接化合物とすることで、プロスタグランジンE1の化学的安定性が高まる。
c 包接化合物とすることで、プロスタグランジンE1の水溶性が高まる。
d α-シクロデキストリンは、グルコースがグリコシド結合でつながった直鎖状化合物である。
e プロスタグランジンE1は、構造中にカルボキシ基を含む。
90回薬剤師国家試験 問10 解答解説
シクロデキストリンとは、複数のグルコースがα1→4グリコシド結合でつながり環状となったオリゴ糖である。
グルコースの数が6個のものはα-シクロデキストリンで、
グルコースの数が7個のものはβ-シクロデキストリンで、
グルコースの数が8個のものはγ-シクロデキストリンである。
下記はβ-シクロデキストリンの構造である。
シクロデキストリンは外側が親水性であるが、内側は比較的に疎水性であるため、内側の空孔に疎水性の化合物を取り込む。これを包接と呼ぶ。
シクロデキストリンの包接化合物とすることで、疎水性の物質の水への溶解性を高めたり、化学的に不安定な物質の安定性を高めることができる。
アルプロスタジルアルファデクスは、
α-シクロデキストリンをホスト、プロスタグランジンE1をゲストとした包接化合物である。
α-シクロデキストリン環の空孔に、疎水性のプロスタグランジンE1を取り込んでいる。
選択肢の正誤は以下の通り。
◆ aについて
a × 主にイオン結合により形成された包接化合物である。
アルプロスタジルアルファデクスは、α-シクロデキストリンの内側とプロスタグランジンE1との間で、主にファンデルワールス力や疎水性相互作用が働くことにより形成された包接化合物である。
◆ bについて
b 〇 包接化合物とすることで、プロスタグランジンE1の化学的安定性が高まる。
プロスタグランジンE1は、シクロデキストリンの包接化合物とすることで、化学的安定性を高めることができる。
ただ、薬物によっては、シクロデキストリンとの複合体形成で安定性が低下する例もある。
◆ cについて
c 〇 包接化合物とすることで、プロスタグランジンE1の水溶性が高まる。
α-シクロデキストリンは、外側が親水性で、
内側の空孔に疎水性の化合物を取り込み、
包接化合物とすることで、可溶化する。
◆ dについて
d × α-シクロデキストリンは、グルコースがグリコシド結合でつながった直鎖状化合物である。
シクロデキストリンは、複数のグルコースがα1→4グリコシド結合でつながった環状化合物である。
◆ eについて
e 〇 プロスタグランジンE1は、構造中にカルボキシ基を含む。
★参考外部サイトリンク
シクロデキストリン(日本食品化工さん)