バレニクリン・ニコチンの化学的性質 107回薬剤師国家試験問211

107回薬剤師国家試験 問211改題
35歳女性。喫煙歴15年( 1日20本)。以前から、ニコチンガムやニコチンパッチによる禁煙を試みたが失敗を繰り返していた。今回、禁煙外来を受診し、ニコチン受容体の部分刺激薬であるバレニクリン酒石酸塩錠による禁煙を試みることになった。

 

問211(物理・化学・生物)
禁煙療法に用いられた薬物の構造から、ニコチン性アセチルコリン受容体との相互作用に関わる化学的性質として、正しいのはどれか。2つ選びなさい。

 

バレニクリン・ニコチンの化学的性質 107回薬剤師国家試験問211

 

1 バレニクリンの共役酸のpKaは4付近である。
2 共に生体内でカチオン性を示す窒素原子をもつ。
3 バレニクリンには鏡像異性体が存在する。
4 ニコチンの不斉炭素はR配置である。
5 ニコチンのsp2混成窒素は水素結合受容体として働く。

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107回薬剤師国家試験 問211 解答解説

 

◆ 1について
1 × バレニクリンの共役酸のpKaは4付近である。

 

2 〇 共に生体内でカチオン性を示す窒素原子をもつ。

 

 

バレニクリンは構造中に脂肪族アミンとなる窒素を有するので、塩基性を示すと考えられる。
一般に、塩基性窒素は中性付近のpHではプロトンを受け取った陽イオン形(カチオン)として存在することから、
そのpkbは少なくとも7以下であり、
共役酸のpKaは7以上であると考えられる。

 

バレニクリンのアミンは脂肪族であり、かつ、2つのアルキル基が結合しているので、比較的に塩基性が強く、生体内のpH(7.4付近)では塩基性窒素がプロトンを受け取って陽イオン形(カチオン)になると考えられる。

 

バレニクリン・ニコチンの化学的性質 107回薬剤師国家試験問211

 

 

同様に、ニコチンも構造中に塩基性窒素を有するので、
生体内では塩基性窒素がプロトンを受け取って陽イオン形(カチオン)になると考えられる。

 

バレニクリン・ニコチンの化学的性質 107回薬剤師国家試験問211

 

 

なお、ニコチンガムの使用において、
炭酸飲料やコーヒーなどで口腔内のpHが酸性に傾くほど、
ニコチンは塩基性窒素がプロトンを受け取って陽イオン形になりやすく、
分子形になりにくくなるので、口腔粘膜からの吸収が低下する。

 

 

◆ 3について
3 × バレニクリンには鏡像異性体が存在する。

 

バレニクリンは不斉中心を有するが、
分子内対称面を持つためアキラルな化合物である。
これをメソ体(メソ化合物)と呼ぶ。

 

バレニクリン・ニコチンの化学的性質 107回薬剤師国家試験問211

 

 

◆ 4について
4 × ニコチンの不斉炭素はR配置である。
→ 〇 ニコチンの不斉炭素はS配置である。

 

不斉中心の絶対配置の判別の仕方については、下記のリンク先を参照
不斉中心の絶対配置の判別について

 

 

バレニクリン・ニコチンの化学的性質 107回薬剤師国家試験問211

 

CのHが手前にあり、@ABが時計回りに並んでいるのでSである。

 

 

◆ 5について
5 〇 ニコチンのsp2混成窒素は水素結合受容体として働く。

 

水素結合のプロトン供与体・プロトン受容体については、
下記のリンク先を参照
水素結合のドナー(プロトン供与体)とアクセプター(プロトン受容体)

 

ニコチンのピリジン環の窒素はsp2混成軌道をとっているが、
その非共有電子対はsp2混成軌道に収容されているため、
環を非局在化するものではない。
よって、ニコチンのsp2混成窒素は水素結合のプロトン受容体(アクセプター)として働く。

 

バレニクリン・ニコチンの化学的性質 107回薬剤師国家試験問211

 

 

★ バレニクリン酒石酸塩(チャンピックス)の薬効薬理

 

バレニクリンはα4β2ニコチン性アセチルコリン受容体の部分作動薬であり、禁煙補助薬として使用されている。
下記はバレニクリン酒石酸塩錠(チャンピックス)の添付文書の薬効薬理の記載である。

 

◆ 作用機序
バレニクリンは、α4β2ニコチン受容体に対して高い結合親和性をもつ、ニコチン受容体の部分作動薬である。バレニクリンが脳内のα4β2ニコチン受容体に結合すると、ニコチンを遮断して喫煙による満足感を抑制する(拮抗作用:タバコが美味しくなくなる)。
同時に、ニコチンの作用で放出されるよりも少量のドパミンを放出させ、禁煙に伴う離脱症状やタバコに対する切望感を軽減する(刺激作用)。

 

 

◆ ニコチン受容体結合能
バレニクリンはヒト大脳皮質のα4β2ニコチン受容体に高親和性に結合するが、その他検討したニコチン受容体(α3β4、α7、α1βγδ受容体)やムスカリン受容体及びコリントランスポーターにはほとんど結合しなかった。

 

◆ ニコチン受容体部分作動薬作用
・バレニクリンは、ニコチンと同様、ラット線条体切片やラット側坐核のドパミン遊離及びドパミン代謝回転を亢進させたが、その作用はニコチンより弱かった。

 

・バレニクリンは、ニコチンと併用するとニコチン作用を抑制した。特に、ラット側坐核におけるニコチンによるドパミン遊離作用を抑制した。

 

 

◆ ニコチン摂取の抑制作用
バレニクリンはニコチン依存ラットにおけるニコチン自己摂取行動を抑制した。

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