ヒトインスリン 医薬品化学 100回薬剤師国家試験問208,209
100回薬剤師国家試験 問208−209
53歳男性。2型糖尿病のため、以前よりグリベンクラミド錠2.5mg 1錠とピオグリタゾン塩酸塩錠15mg 1錠を1日1回服用していた。春の定期健康診断で、胃がんが見つかり、手術の適応となった。手術時には、経口薬が使えないため、以下の処方に切り替えることとなった。
よく混和し50mL/時間で滴下し1時間ごとに血糖値をチェックすること
問208
上記の処方により、手術時及び術後に血糖値のコントロールが必要な理由として誤っているのはどれか。1つ選びなさい。
1 感染症のリスクが高くなる。
2 アルカローシスになりやすい。
3 高浸透圧性昏睡を生じる可能性がある。
4 手術侵襲により高血糖を起こしやすい。
5 創傷治癒の遅延が生じやすい。
問209
次の化学構造で表されるヒトインスリンに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 A鎖のC末端のアミノ酸はグリシンである。
2 ヒトインスリンのアミノ酸の一部を置換した超速効型インスリンは、二量体を形成しにくい。
3 3つのジスルフィド結合はすべて、2本のペプチド鎖を互いに結合させている。
4 ジスルフィド結合は、システイン残基の酸化反応によって形成される。
5 インスリンは肝臓でA鎖とB鎖に開裂し、活性を発現する。
100回薬剤師国家試験 問208 解答解説
下記のリンク先を参照
100回問208の解答解説
100回薬剤師国家試験 問209 解答解説
◆ 1について
1 × A鎖のC末端のアミノ酸はグリシンである。
→ 〇 A鎖のN末端はグリシンで、C末端はアスパラギンである。
慣例として、ペプチドのアミノ酸配列を書くときは、
N末端からC末端に向けて左から右へ書く(N末端が左端)。
◆ 2について
2 〇 ヒトインスリンのアミノ酸の一部を置換した超速効型インスリンは、二量体を形成しにくい。
皮下注射されたインスリン製剤は、6量体,二量体,単量体を取り得るが、単量体となって血管内に取り込まれる。
超速攻型インスリンはヒトインスリンのアミノ酸の一部を置換することで、速やかに単量体へ解離するとともに、6量体,二量体の形成を抑制することで、効果発現を早めている。
◆ 3について
3 × 3つのジスルフィド結合はすべて、2本のペプチド鎖を互いに結合させている。
インスリンの3つのジスルフィド結合のうち、2つはA鎖とB鎖を互いに結合させているが、1つはA鎖内で形成されている。
◆ 4について
4 〇 ジスルフィド結合は、システイン残基の酸化反応によって形成される。
2つのチオール基(−SH)からジスルフィド(−S−S−)が形成される反応は酸化である。
逆に、ジスルフィド(−S−S−)から2つのチオール基(−SH)への変換は還元である。
下記のリンク先を参照
チオール(メルカプト)の酸化でジスルフィド 第87回問11d
インスリンの生合成について、まず前駆体として、シグナルペプチド・B鎖・Cペプチド・A鎖から成るプレプロインスリンが合成される。
次に、シグナルペプチドが切断され、B鎖・Cペプチド・A鎖から成るプロインスリンとなる。
その後、プロインスリンのシステイン残基が酸化され、3つのジスルフィド結合が形成される。Cペプチドが存在することで、正しい位置でジスルフィド結合が形成される。
プロインスリンのCペプチドが切断され、A鎖とB鎖からなるインスリンとなる。
インスリンは6量体を形成し、Cペプチドとともに分泌される。
なお、血中Cペプチドの値は、インスリン分泌能の指標として用いられる。
◆ 5について
5 × インスリンは肝臓でA鎖とB鎖に開裂し、活性を発現する。
インスリンはA鎖とB鎖がつながった状態で受容体に作用することで活性を発現する。
A鎖とB鎖が開裂すると活性を失う。
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第100回問208,209(e-RECさん)