医薬品の設計で水素原子をフッ素原子に置き換えることにより期待される主な効果 99回問206,207
99回薬剤師国家試験 問206−207
63歳男性。脂質異常症と診断され、食事療法及び運動療法とともにフルバスタチンナトリウム錠20mg による治療を受けていたが、改善がみられなかった。そこで、以下の処方に変更された。
問206
この患者への薬剤師による服薬指導の内容として誤っているのはどれか。1つ選びなさい。
1 脂質異常症は自覚症状がないが、服薬は重要であることを説明した。
2 食事療法及び運動療法は継続するように指導した。
3 コレスチミド錠を飲み忘れた場合、就寝前にフルバスタチンナトリウム錠と一緒に服用するように指導した。
4 筋肉痛や脱力感がある場合は受診するように指導した。
5 便秘が起こることがあると説明した。
問207
フルバスタチンナトリウムのほかにも、以下の例のように分子内にフッ素原子が導入された医薬品が数多く開発されている。医薬品の設計において水素原子をフッ素原子に置き換えることにより期待される主な効果はどれか。2つ選びなさい。
1 炭素−フッ素結合は切断されにくいので、生体内での安定性が高まる。
2 親水性の向上により、吸収が促進される。
3 フッ素は電気陰性度が大きいので、分子のイオン化が促進される。
4 分子全体の大きさにはほとんど影響を与えずに生物活性が増強される。
99回薬剤師国家試験 問206 解答解説
下記のリンク先を参照
99回問206 解答解説
99回薬剤師国家試験 問207 解答解説
◆ 1について
1 〇 炭素−フッ素結合は切断されにくいので、生体内での安定性が高まる。
炭素−フッ素結合は炭素−水素結合に比べて結合エネルギーが高く切断されにくいので、水素をフッ素に置換することで安定性が高まり、代謝されにくくなる場合がある。
◆ 2について
2 × 親水性の向上により、吸収が促進される。
一般に、フッ素の導入により疎水性が向上し、脂溶性が高まり、吸収が促進される。
ただし、フッ素の導入で水溶性が向上する場合もある。
◆ 3について
3 × フッ素は電気陰性度が大きいので、分子のイオン化が促進される。
フッ素の電気陰性度は大きいが、水素をフッ素に置換しても分子のイオン化は促進されない。
むしろ、C−F結合は切断されにくいのでイオン化は抑制されると考えられる。
◆ 4について
4 〇 分子全体の大きさにはほとんど影響を与えずに生物活性が増強される。
水素原子とフッ素原子は大きさが似ているため、水素をフッ素で置換することで、分子サイズはほとんど変えずに生物活性を増強できる場合がある。
★ 参考外部サイトリンク
医薬品におけるフッ素の役割とは(M-hubさん)
医薬品にフッ素が活用される理由(日経DI onlineさん)
★他サイトさんの解説へのリンク
99回問206,207(e-RECさん)