93回薬剤師国家試験問11 プラバスタチンナトリウムに関する記述
93回薬剤師国家試験 問11
プラバスタチンナトリウムに関する記述の正誤を判定してみよう。
a 本品は水に溶けやすく、ジエチルエーテルにはほとんど溶けない。
b エステル結合を構成するカルボン酸部分の不斉炭素の絶対配置はRである。
c 赤外吸収スペクトルにおいて観測される1727 cm-1付近の吸収は、ヒドロキシ基の伸縮振動に基づくものである。
d 本品は、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA (HMG-CoA) 還元酵素を阻害する。
93回薬剤師国家試験 問11 解答解説
◆ aについて
a 〇 本品は水に溶けやすく、ジエチルエーテルにはほとんど溶けない。
プラバスタチンナトリウム(メバロチン)は、カルボン酸をナトリウム塩としてあり、また、疎水性部分の大きさに対してヒドロキシ基の数が多いため、水溶性は高く、親油性は低いのでジエチルエーテルには溶けにくいと考えられる。
◆ bについて
b × エステル結合を構成するカルボン酸部分の不斉炭素の絶対配置はRである。
→ 〇 エステル結合を構成するカルボン酸部分の不斉炭素の絶対配置はSである。
設問の不斉炭素の絶対配置は、
Cが奥側にあり、@ABが反時計回りに並んでいるのでSである。
◆ cについて
c × 赤外吸収スペクトルにおいて観測される1727 cm-1付近の吸収は、ヒドロキシ基の伸縮振動に基づくものである。
→ 〇 赤外吸収スペクトルにおいて観測される1727 cm-1付近の吸収は、カルボニル(C=O)の伸縮振動に基づくものである。
赤外吸収スペクトルにおいて、
カルボニル(C=O)の伸縮振動は1780〜1650cm-1の領域に吸収が見られ、
ヒドロキシ基の伸縮振動は3400〜3200cm-1の領域に吸収が見られることが多い。
◆ dについて
d 〇 本品は、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA (HMG-CoA) 還元酵素を阻害する。
スタチン類は、コレステロール生合成系の律速酵素であるHMG-CoA還元酵素と非共有結合することで特異的かつ拮抗的に阻害し、コレステロール生合成原料のメバロン酸の合成を阻害する。その結果、肝臓のLDL受容体の発現が促進し、血液中から肝臓へのLDLの取り込み促進により血漿LDLコレステロール,総コレステロールが低下する。また、肝臓での持続的なコレステロール合成阻害により血液中へのVLDL分泌が減少し、血漿トリグリセリドが低下する。