レボドパ,カルビドパ,セレギリン 医薬品化学 103回薬剤師国家試験問208,209

103回薬剤師国家試験 問208?209
78歳女性。高血圧症とパーキンソン病で処方1を服用していた。パーキンソン病症状のコントロールが困難になったため、新たに処方2が追加された。
(処方1)
ニルバジピン錠2mg
レボドパ250mg・カルビドパ配合錠
1回1錠(1日2錠)
1日2回 朝夕食後 14日分
1回1錠(1日3錠)
1日3回 朝昼夕食後 14日分

 

(処方2)
セレギリン塩酸塩錠2.5 mg 1回1錠(1日1錠)
1日1回 朝食後 14日分

 

 

問208
本症例において処方2が追加された原因として、最も適切なのはどれか。1つ選びなさい。
1 ウェアリング・オフ
2 ジスキネジア
3 悪性症候群
4 動悸
5 異常興奮

 

 

問209
以下に示すA〜Cはセレギリン、レボドパ又はカルビドパのいずれかである。これらの医薬品に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。

 

レボドパ,カルビドパ,セレギリン 103回薬剤師国家試験問208,209

 

1 AとCは、同じ標的分子の別の部位に結合することにより、代謝反応によるドパミンの分解を阻害する。
2 Bは、生体内でドパミンに変化することによって活性を発現するプロドラッグである。
3 Bは、脳内で芳香族L−アミノ酸脱炭酸酵素による代謝を受ける。
4 Cは、一置換ヒドラゾン構造をもつ。
5 Cは、Bと同様に血液脳関門を通過しやすい。

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103回薬剤師国家試験 問208 解答解説

 

正解は「1.ウェアリング・オフ」である。

 

ウェアリング・オフとは、レボドパの長期服用において、レボドパの薬効持続時間が短縮し、レボドパの効果が消退する時間帯が現れる現象を指す。

 

本患者はレボドパ・カルビドパ配合錠を服用していたが、パーキンソン病症状のコントロールが困難になったため、新たにセレギリン塩酸塩錠が追加された。これはウェアリング・オフに対しての処方追加だと考えられる。

 

 

103回薬剤師国家試験 問209 解答解説

 

レボドパ,カルビドパ,セレギリン 103回薬剤師国家試験問208,209

 

◆ 1,2,3について

 

1 × AとCは、同じ標的分子の別の部位に結合することにより、代謝反応によるドパミンの分解を阻害する。

 

2 〇 Bは、生体内でドパミンに変化することによって活性を発現するプロドラッグである。

 

3 〇 Bは、脳内で芳香族L−アミノ酸脱炭酸酵素による代謝を受ける。

 

 

Bはレボドパ(L-ドパ)だと判別できる必要がある。

 

レボドパ,カルビドパ,セレギリン 103回薬剤師国家試験問208,209

 

 

レボドパはドパミンの前駆体であり,血液脳関門を通過し,脳内で芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼ(ドパ脱炭酸酵素)で脱炭酸されてドパミンに変換され,パーキンソン病の症状を軽減する。

 

カテコールアミンの生合成と代謝は下記のリンク先を参照
カテコールアミンの合成と代謝の経路

 

A〜Cのうち、Bがレボドパであることはわかるため、AおよびCはカルビドパかセレギリンのどちらかだと考えられる。
セレギリンはB型モノアミン酸化酵素(MAOB)の不可逆的阻害薬であり、MAOBによるドパミンの酸化的脱アミノ化の分解反応を阻害し、シナプス間隙でのドパミン濃度を上昇させる。

 

カルビドパは末梢性芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼ阻害薬(decarboxylaseinhibitor:DCI)である。レボドパが末梢で芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼ(ドパ脱炭酸酵素)で脱炭酸されてドパミンになっても、ドパミンは血液脳関門を通過できない。レボドパとカルビドパ等のDCIを併用すると、レボドパが末梢で脱炭酸されてドパミンに変換されるのを抑制し、脳内に移行するレボドパの量を増加させることができる。

 

また、カルビドパ等のDCIは、レボドパが末梢で脱炭酸されることによる末梢性副作用(悪心,嘔吐など)を軽減する効果もある。

 

なお、Aはセレギリンで、Cはカルビドパである。

 

レボドパ,カルビドパ,セレギリン 103回薬剤師国家試験問208,209

 

 

 

レボドパ,カルビドパ,セレギリン 103回薬剤師国家試験問208,209

 

 

◆ 4
4 × Cは、一置換ヒドラゾン構造をもつ。
→ 〇 Cは、一置換ヒドラジン構造をもつ。

 

詳細は下記のリンク先を参照
103回問209の4

 

 

◆ 5
5 × Cは、Bと同様に血液脳関門を通過しやすい。

 

Bのレボドパは単純拡散では血液脳関門を通過しないが、中性アミノ酸トランスポーターLAT1を介して血液脳関門を通過して脳内に移行する。

 

Cのカルビドパは単純拡散では血液脳関門を通過できず、また、レボドパと異なりアミノ基がヒドラジンであるため中性アミノ酸トランスポーターLAT1を介した脳内移行はない。

 

 

★他サイトさんの解説へのリンク
第103回問208,209(e-RECさん)

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