β-シクロデキストリンのグリコシド結合,包接,用いられる注射 98回薬剤師国家試験問210,211
98回薬剤師国家試験 問210−211
腎機能が低下した患者では、溶解補助剤であるヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンが蓄積することにより腎機能がさらに悪化することがある。
問210
この溶解補助剤が用いられている注射剤はどれか。1つ選びなさい。ただし、( )内は有効成分名を示す。
1 ホスミシンS静注用1g(ホスホマイシンナトリウム)
2 オメプラール注用20(オメプラゾールナトリウム)
3 イトリゾール注1%(イトラコナゾール)
4 セフメタゾン静注用0.5g(セフメタゾールナトリウム)
5 硫酸カナマイシン注射液1000mg(カナマイシン硫酸塩)
問211
ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンはβ-シクロデキストリン(β-CD)の誘導体である。β-CDに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 β-CD は7つのグルコースから構成されている。
2 単糖間は、すべてβ-グリコシド結合でつながっている。
3 β-CD やクラウンエーテルのように、分子の空孔に他の分子を取り込む現象を抱合という。
4 β-CD は外側が親水性で、空孔に疎水性の化合物を取り込み可溶化する。
98回薬剤師国家試験 問210 解答解説
溶解補助剤としてヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンが用いられている注射剤は、
3のイトリゾール注1%(イトラコナゾール)である。
他の選択肢の注射剤の有効成分名を見ると、いずれも塩である。
薬剤の溶解性を改善する手法の1つとして塩にすることが挙げられ、本問の選択肢の塩は水溶性だと考えられる。ただし、塩の製剤でも水に難溶性のものはあるので注意。
本問の正解を導くにあたり、3のイトリゾール注1%(イトラコナゾール)のみ塩ではないので、これに溶解補助剤としてヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンが用いられていると推測できる。
98回薬剤師国家試験 問211 解答解説
◆ 1について
1 〇 β-CD は7つのグルコースから構成されている。
シクロデキストリンとは、複数のグルコースがα1→4グリコシド結合でつながり環状となったオリゴ糖である。
グルコースの数が6個のものはα-シクロデキストリンで、
グルコースの数が7個のものはβ-シクロデキストリンで、
グルコースの数が8個のものはγ-シクロデキストリンである。
◆ 2について
2 × 単糖間は、すべてβ-グリコシド結合でつながっている。
設問の図のシクロデキストリンはグルコース同士がすべてα-グリコシド結合でつながっている。
ただし、今後、多様なシクロデキストリンの開発の可能性はある。
環状オリゴ糖‘シクロデキストリン’化学の新展開(Japanest NIPPONさん)
◆ 3について
3 × β-CD やクラウンエーテルのように、分子の空孔に他の分子を取り込む現象を抱合という。
→ 〇 β-CD やクラウンエーテルのように、分子の空孔に他の分子を取り込む現象を包接という。
◆ 4について
4 〇 β-CD は外側が親水性で、空孔に疎水性の化合物を取り込み可溶化する。
★参考外部サイトリンク
シクロデキストリン(日本食品化工さん)
★他サイトさんの解説へのリンク
第98回問210,211(e-RECさん)