標的酵素の活性部位と共有結合を形成するのはどれか 100回薬剤師国家試験問105
100回薬剤師国家試験 問105
次の医薬品のうち、医薬品そのもの、または代謝物が、標的酵素の活性部位と共有結合を形成するのはどれか。2つ選びなさい。
100回薬剤師国家試験 問105 解答解説
正解は3(フルオロウラシル)と5(ベンジルペニシリンカリウム)である。
◆ 3について
フルオロウラシル(5-FU)は、腫瘍細胞内に取り込まれた後、ウラシルと同じ経路で代謝を受けてF-deoxy UMP(FDUMP)となり、
チミジル酸合成酵素(チミジル酸シンターゼ)、および、メチレンテトラヒドロ葉酸と共有結合を形成して安定な三者複合体となり、
チミジル酸シンターゼを不可逆的に阻害する。
このような機序で5-FUはdeoxy UMPと拮抗してチミジル酸の合成を抑制することにより、DNAの合成を阻害すると考えられている。
5-FUの作用の詳細には下記のリンク先
フルオロウラシル(5-FU)の薬理 作用機序
◆ 5について
ベンジルペニシリンは、細菌細胞壁のペプチドグリカンの合成酵素であるペニシリン結合タンパク質(PBP)のトランスペプチダーゼのセリン残基をアシル化(共有結合)することで、この酵素を失活させ、ペプチドグリカンの合成を阻害し、殺菌作用を示す。
β-ラクタム系抗生物質の作用の詳細は下記のリンク先を参照
β-ラクタム系抗生物質の作用機序
他の選択肢について
◆ 1について
オセルタミビルリン酸塩(タミフル)は、消化管から吸収された後、肝臓のカルボキシルエステラーゼにより加水分解されて活性本体となるプロドラッグである。
オセルタミビルリン酸塩(タミフル)の活性体は、ヒトA型及びB型インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼに対して選択的に非共有結合することで阻害し、新しく形成されたウイルスの感染細胞からの遊離を阻害することにより、ウイルスの増殖を抑制する。
ノイラミニダーゼ阻害薬の構造の特徴については、下記のリンク先を参照
ノイラミニダーゼ阻害薬の構造の特徴
◆ 2について
2はスタチン類に特徴的な構造を有する。
スタチン類の構造の特徴については、下記のリンク先を参照
スタチンの構造的特徴
2はプラバスタチンナトリウム(メバロチン)であり、肝臓においてコレステロール生合成系の律速酵素であるHMG-CoA還元酵素と非共有結合することで選択的かつ競合的に阻害し、コレステロール生合成原料のメバロン酸の合成を阻害する。その結果、肝臓のLDL受容体の発現が促進し、血液中から肝臓へのLDLの取り込み促進により血漿LDLコレステロール,総コレステロールが低下する。また、肝臓での持続的なコレステロール合成阻害により血液中へのVLDL分泌が減少し、血漿トリグリセリドが低下する。
◆ 4について
4はH2ブロッカーに特徴的な構造を有する。
H2ブロッカーの構造の特徴については、下記のリンク先を参照
H2ブロッカーの構造の特徴
4はファモチジン(ガスター)であり、胃粘膜壁細胞のヒスタミンH2受容体と非共有結合することでこれを遮断し、胃酸分泌を抑制することにより、胃・十二指腸潰瘍、胃炎等の治癒効果を示す。
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