リセンドロン酸Naの化学的性質 107回薬剤師国家試験問213
107回薬剤師国家試験 問212
75歳女性。骨粗しょう症の治療のため、近隣の整形外科クリニックに通院しており、以下の処方箋を持って薬局を訪れた。
この患者は、1ヶ月前からこの薬剤を継続服用している。
薬剤師は患者の医薬品に関する理解度を高めるために、繰り返し、服用に関する注意点を説明することにした。
問212(実務)
薬剤師が伝えるべき内容として、適切なのはどれか。2つ選びなさい。
1 服用後は、横になって安静にすること。
2 牛乳・乳製品と同時に服用しないこと。
3 服用後すぐに吐き気を催した場合には、制酸剤を服用すること。
4 定期的に歯科検査を受けること。
5 未吸収の成分により便が黒色になるが、心配ないこと。
問213(物理・化学・生物)
処方薬の化学的性質として、誤っているのはどれか。1つ選びなさい。
1 粘膜刺激性がある。
2 カルシウムイオンなどの金属イオンに対して高い親和性を示す。
3 小腸では高極性のイオン型をとる。
4 ヒドロキシアパタイトに吸着する。
5 塩基性溶液中では加水分解される。
107回薬剤師国家試験 問212(実務) 解答解説
リセドロン酸Na錠(ベネット)は、
ビスホスホネート製剤である。
詳細は下記のリンク先を参照
リセンドロン酸Naの服薬指導 107回問212
107回薬剤師国家試験 問213(物理・化学・生物) 解答解説
◆ 1について
1 〇 粘膜刺激性がある。
ビスホスホネート製剤は粘膜刺激性があり、食道炎や食道潰瘍、口腔咽頭部の潰瘍を起こす可能性があるので、服用後は速やかに胃内へと到達させることが重要である。
よって、起床時に立位あるいは坐位で、十分量(約180mL)の水とともに服用し、服用後30分は横たわらない。
口腔咽頭刺激の可能性があるので噛まずに、なめずに服用する。
食道疾患の症状(嚥下困難又は嚥下痛、胸骨後部の痛み、高度の持続する胸やけ等)があらわれた場合には主治医に連絡する。
また、次の患者はビスホスホネート製剤の投与は禁忌になっている。
・食道狭窄又はアカラシア(食道弛緩不能症)等の食道通過を遅延させる障害のある患者[本剤の食道通過が遅延することにより、食道局所における副作用発現の危険性が高くなる。]
・服用時に立位あるいは坐位を30分以上保てない患者
◆ 2について
2 〇 カルシウムイオンなどの金属イオンに対して高い親和性を示す。
リセドロン酸Naなどのビスホスホネートは構造中にリン酸基を2つ有する(ビスは2を意味する)。
下記はリセドロン酸Na水和物(ベネット)の構造である。
金属の多価陽イオンに対して、ビスホスホネートの2つのリン酸基がそれぞれ非共有電子対を供与することで配位結合を形成し、安定なキレート錯体を形成する。
これによりビスホスホネートの吸収が低下する。
そのため、ビスホスホネート製剤の添付文書の用法の項に下記の記述がある。
「ビスホスホネート製剤を水以外の飲料(Ca、Mg等の含量の特に高いミネラルウォーターを含む)や食物あるいは他の薬剤と同時に服用すると、本剤の吸収を妨げることがあるので、起床後、最初の飲食前に服用し、かつ服用後少なくとも30分は水以外の飲食を避ける。」
◆ 3について
3 〇 小腸では高極性のイオン型をとる。
小腸のアルカリ性環境下では、
リセンドロン酸Naの2つのリン酸基はプロトンを解離し、
陰イオン形(アニオン)となっている。
◆ 4について
4 〇 ヒドロキシアパタイトに吸着する。
ヒドロキシアパタイト(水酸化リン酸カルシウム(Ca)10(PO4)6(OH)2)は、骨塩の成分である。
ビスホスホネートは骨塩の成分であるヒドロキシアパタイトに強い親和性を持ち、破骨細胞が存在する骨表面のヒドロキシアパタイトに吸着し、破骨細胞に取り込まれた後、破骨細胞内でファルネシルピロリン酸合成酵素を阻害し、破骨細胞の骨吸収機能を抑制することにより、骨吸収を抑制して骨代謝回転を抑制すると考えられる。
◆ 5について
5 × 塩基性溶液中では加水分解される。
リセンドロン酸Naは塩基性溶液に解けるが、加水分解はされない。
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107回問212,213(e-RECさん)