リセンドロン酸Naの服薬指導 107回薬剤師国家試験問212

107回薬剤師国家試験 問212
75歳女性。骨粗しょう症の治療のため、近隣の整形外科クリニックに通院しており、以下の処方箋を持って薬局を訪れた。

 

リセンドロン酸Naの服薬指導 107回薬剤師国家試験問212

 

 

この患者は、1ヶ月前からこの薬剤を継続服用している。
薬剤師は患者の医薬品に関する理解度を高めるために、繰り返し、服用に関する注意点を説明することにした。

 

問212(実務)
薬剤師が伝えるべき内容として、適切なのはどれか。2つ選びなさい。

 

1 服用後は、横になって安静にすること。
2 牛乳・乳製品と同時に服用しないこと。
3 服用後すぐに吐き気を催した場合には、制酸剤を服用すること。
4 定期的に歯科検査を受けること。
5 未吸収の成分により便が黒色になるが、心配ないこと。

トップページへ

 

薬剤師国家試験過去問題 科目別まとめ一覧 へ

 

 

107回薬剤師国家試験 問212(実務) 解答解説

 

リセンドロン酸Naの服薬指導 107回薬剤師国家試験問212

 

リセドロン酸Na錠(ベネット)は、
ビスホスホネート製剤である。

 

◆ 1について
1 × 服用後は、横になって安静にすること。

 

ビスホスホネート製剤は、起床時に立位あるいは坐位で、
十分量(約180mL)の水とともに経口投与し、
服用後少なくとも30分は横にならず、
水以外の飲食並びに他の薬剤の経口摂取も避けることとされている。

 

ビスホスホネート製剤は粘膜刺激性があり、食道炎や食道潰瘍、口腔咽頭部の潰瘍を起こす可能性があるので、服用後は速やかに胃内へと到達させることが重要である。
よって、起床時に立位あるいは坐位で、十分量(約180mL)の水とともに服用し、服用後30分は横たわらない。
口腔咽頭刺激の可能性があるので噛まずに、なめずに服用する。
食道疾患の症状(嚥下困難又は嚥下痛、胸骨後部の痛み、高度の持続する胸やけ等)があらわれた場合には主治医に連絡する。

 

また、次の患者はビスホスホネート製剤の投与禁忌になっている。
・食道狭窄又はアカラシア(食道弛緩不能症)等の食道通過を遅延させる障害のある患者[本剤の食道通過が遅延することにより、食道局所における副作用発現の危険性が高くなる。]

 

・服用時に立位あるいは坐位を30分以上保てない患者

 

 

◆ 2について
2 〇 牛乳・乳製品と同時に服用しないこと。

 

ビスホスホネート製剤は水のみで服用する。
ビスホスホネートはカルシウムイオン(Ca2+)等の金属の多価陽イオンと錯体を形成し、
これによりビスホスホネートの吸収が低下する。

 

そのため、ビスホスホネート製剤の添付文書の用法の項に下記の記述がある。
「ビスホスホネート製剤を水以外の飲料(Ca、Mg等の含量の特に高いミネラルウォーターを含む)や食物あるいは他の薬剤と同時に服用すると、本剤の吸収を妨げることがあるので、起床後、最初の飲食前に服用し、かつ服用後少なくとも30分は水以外の飲食を避ける。」

 

 

◆ 3について
3 × 服用後すぐに吐き気を催した場合には、制酸剤を服用すること。

 

制酸剤はマグネシウムやアルミニウムを含む。
ビスホスホネート製剤を服用後、時間の経たないうちに制酸剤を服用すると、
制酸剤に含まれる金属の多価陽イオンとビスホスホネートとが錯体を形成し、
ビスホスホネートの吸収が低下する。
よって、ビスホスホネート製剤を服用後、
少なくとも30分経過してから制酸剤を服用する。

 

なお、過量投与時の処置として、
ビスホスホネートの吸収を抑制するために、
制酸剤や牛乳など多価金属陽イオンを含有するものの投与を考慮する。
食道に対する刺激の危険性があるので嘔吐を誘発してはならず、患者を立たせるか、上体を起こして座らせること。

 

 

◆ 4について
4 〇 定期的に歯科検査を受けること。

 

ビスホスホネートの重大な副作用として、
顎骨壊死・顎骨骨髄炎がある。
これに関して、ビスホスホネート製剤の添付文書の重要な基本的注意の項に下記の記載がある。
「ビスホスホネート系薬剤による治療を受けている患者において、
顎骨壊死・顎骨骨髄炎があらわれることがある。
報告された症例の多くが抜歯等の顎骨に対する侵襲的な歯科処置や局所感染に関連して発現している。
リスク因子としては、悪性腫瘍、化学療法、血管新生阻害薬、コルチコステロイド治療、放射線療法、口腔の不衛生、歯科処置の既往等が知られている。
本剤の投与開始前は口腔内の管理状態を確認し、
必要に応じて、患者に対し適切な歯科検査を受け、
侵襲的な歯科処置をできる限り済ませておくよう指導すること。
本剤投与中に侵襲的な歯科処置が必要になった場合には本剤の休薬等を考慮すること。
また、口腔内を清潔に保つこと、定期的な歯科検査を受けること、歯科受診時に本剤の使用を歯科医師に告知して侵襲的な歯科処置はできる限り避けることなどを患者に十分説明し、異常が認められた場合には、直ちに歯科・口腔外科を受診するように指導すること。」

 

 

◆ 5について
5 × 未吸収の成分により便が黒色になるが、心配ないこと。

 

リセドロン酸ナトリウムの服用により、
未吸収の成分で便が黒くなるという報告はない。

 

なお、鉄剤の服用で、未吸収の成分により便が黒色になることはあるが、この場合は心配ない。

 

 

★ ビスホスホネートの薬効薬理
ビスホスホネートは骨塩の成分であるヒドロキシアパタイトに強い親和性を持ち、
破骨細胞が存在する骨表面のヒドロキシアパタイトに吸着し、
破骨細胞に取り込まれた後、
破骨細胞内でファルネシルピロリン酸合成酵素を阻害し、
破骨細胞の骨吸収機能を抑制することにより、
骨吸収を抑制して骨代謝回転を抑制すると考えられる。

 

 

★他サイトさんの解説へのリンク
107回問212,213(e-RECさん)

トップへ戻る