シクロホスファミドの調製と投与 99回薬剤師国家試験問210

99回薬剤師国家試験 問210
40歳女性。身長154cm、体重54kg。造血幹細胞移植の前治療で注射用シクロホスファミド水和物をシクロホスファミド(無水物換算)として50mg/kg/dayで投与することになった。なお、点滴静注の場合は、シクロホスファミド(無水物換算)100mgあたり5mLの注射用水を用いて溶解後、1日当たりの必要量(X mL)を量りとり、補液で希釈し用いる。

 

シクロホスファミドの調製と投与に関して正しいのはどれか。2つ選びなさい。

 

1 X = 27である。
2 補液には生理食塩液を用いる。
3 大量投与する時には、出血性膀胱炎予防のためメスナ(2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム)を投与する。
4 治療効果を向上させるため、シクロホスファミド投与終了後24時間は輸液の投与を避ける。

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99回薬剤師国家試験 問210 解答解説

 

◆ 1について
1 × X = 27である。
→ 〇 X = 135である。

 

造血幹細胞移植の前治療で注射用シクロホスファミド水和物(エンドキサン)をシクロホスファミド(無水物換算)として50mg/kg/dayで投与することになっており、患者の体重は54kgであるため、
シクロホスファミド(無水物換算)の1日当たりの投与量は、
50mg/kg/day×54kg=2700mg/day
である。

 

シクロホスファミド(無水物換算)100mgあたり5mLの注射用水を用いて溶解するので、
シクロホスファミド溶液の1日当たりの必要量(X mL)は、
100mg:5mL = 2700mg:XmL
より、
X=135である。

 

 

◆ 2について
2 〇 補液には生理食塩液を用いる。

 

注射用シクロホスファミド水和物(エンドキサン)の添付文書上の注射液の調整法は下記の通り。

 

・シクロホスファミド(無水物換算)100mgあたり5mLの生理食塩液,注射用水等を加えて溶解する。
・静脈内等へのワンショット投与の場合には,溶液が低張となるため注射用水を使用しないこと。
・点滴静注の場合には,溶解後適当な補液で希釈すること。

 

 

◆ 3について
3 〇 大量投与する時には、出血性膀胱炎予防のためメスナ(2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム)を投与する。

 

シクロホスファミドが体内で代謝される過程でアクロレインが生成し、アクロレインが出血性膀胱炎等の泌尿器系障害を引き起こすと考えられている。

 

シクロホスファミドの調製と投与 99回薬剤師国家試験問210

 

そのため、シクロホスファミド投与の際は出血性膀胱炎の防止のため、アクロレインの体外排出を促すよう尿量の増加を図るが、特に造血幹細胞移植の前治療に投与する場合には,シクロホスファミドを投与終了後24時間は150mL/時間以上の尿量を保つように,1日3L以上の輸液を投与するとともにメスナを併用することとされている。

 

メスナ(ウロミテキサン)の添付文書上の作用機序は下記の通り。

 

ラットにおけるイホスファミド及びシクロホスファミドによる膀胱障害は,これらの尿中代謝物が膀胱粘膜と接触して発現する局所障害であり,血行を介する全身性の毒性ではない。この膀胱障害のメスナによる抑制機構としては,次の経路が推定されている。

 

(1)イホスファミド及びシクロホスファミドの尿中代謝物アクロレインが膀胱障害を誘発するが,アクロレインの二重結合にメスナが付加し,無障害性の付加体を形成する。
(2)イホスファミド及びシクロホスファミドの抗腫瘍活性物質 4-ヒドロキシ体がメスナと縮合して,無障害性のメスナ縮合体を形成することにより,アクロレインの生成が抑制される。

 

メスナ(2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム)はアクロレインに求核付加することで、アクロレインを無毒化する。しかし、この反応は可逆的なため、大量の補液により尿量を増やすことで、アクロレインが再生する
前に体外に排泄する必要がある。

 

シクロホスファミドの調製と投与 99回薬剤師国家試験問210

 

 

◆ 4について
4 × 治療効果を向上させるため、シクロホスファミド投与終了後24時間は輸液の投与を避ける。

 

シクロホスファミド投与の際は出血性膀胱炎を引き起こす副産物のアクロレインの体外排出を促すよう尿量の増加を図るが、特に造血幹細胞移植の前治療に投与する場合には,シクロホスファミドを投与終了後24時間は150mL/時間以上の尿量を保つように,1日3L以上の輸液を投与するとともにメスナを併用することとされている。

 

 

★ シクロホスファミドの薬理作用
シクロホスファミドはナイトロジェンマスタード類のアルキル化薬である。
主にCYP2B6で代謝されて活性化されるプロドラッグであり、DNA鎖間で架橋を形成することにより、DNAの複製やDNAからmRNAへの転写を停止することにより、細胞の増殖を抑制する。

 

 

★他サイトさんの解説へのリンク
第99回問210〜212(e-RECさん)

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