かぜ薬の成分 血液検査と尿検査 尿の着色 103回薬剤師国家試験問206,207
103回薬剤師国家試験 問206−207
35歳女性。かぜの症状緩和のため、一般用医薬品を購入する目的で薬局を訪れた。患者情報及び相談内容は以下のとおりであった。
症状: 筋肉・関節の痛み、肩こり、鼻水、くしゃみ、のどの痛み、せきの順に症状がつらい。
治療中の疾患:現在なし。
相談事項:明日、社内健康診断で血液検査と尿検査をする。以前、総合感冒薬を飲んだときに尿の色が鮮やかな黄色になったことがある。明日の尿検査の際、採尿カップ内の尿に色が着くと恥ずかしいので、尿に目立った色が着かないかぜ薬を希望する。
103回薬剤師国家試験 問206
この患者に合わせた一般用医薬品を選択するにあたり、必要な成分の組合せとして以下の4成分を考えた。成分A及び成分Bとして適切なのはどれか。2つ選びなさい。
1 アスコルビン酸
2 チザニジン塩酸塩
3 クロルフェニラミンマレイン酸塩
4 フルスルチアミン塩酸塩
5 リボフラビン
103回薬剤師国家試験 問207
この患者は以前に総合感冒薬で尿の着色を経験している。その原因と考えられる化合物はどれか。1つ選びなさい。なお、一般に、長い共役系を有する化合物は可視領域の光を吸収する。
103回薬剤師国家試験 問206 解答解説
症状: 筋肉・関節の痛み、肩こり、鼻水、くしゃみ、のどの痛み、せきの順に症状がつらい。
明日、社内健康診断で血液検査と尿検査をする。尿に目立った色が着かないかぜ薬を希望する。
この情報をもとに、設問のかぜ薬に配合される4つの成分について検討する。
アセトアミノフェンは解熱鎮痛薬である。
dl-メチルエフェドリン塩酸塩は、アドレナリン作動性の気管支拡張作用,中枢性鎮咳作用,抗アレルギー作用を示し、本患者では鎮咳を目的とする。
あとの2つの成分AとBは他の症状の改善を目的とし、かつ、翌日の血液検査・尿検査に影響しないものである。
◆ 1について
1 × アスコルビン酸(ビタミンC)
L-アスコルビン酸(ビタミンC)は感冒において消耗しやすいので、補給のためにかぜ薬に配合されることがある。
しかし、尿検査において、尿中に排泄されたビタミンCにより尿糖や潜血が偽陰性となることがある。これらは検出に酸化反応を利用しているため、ビタミンCの還元作用で偽陰性となってしまう。
本患者は翌日に尿検査を控えているので、アスコルビン酸(ビタミンC)は不適切である。
◆ 2について
2 × チザニジン塩酸塩
チザニジンは中枢性のアドレナリンα2作動効果を有し、脊髄及び脊髄上位中枢に作用して、固縮緩解作用、脊髄反射抑制作用等の筋緊張緩和作用を有する。
チザニジンは中枢性筋弛緩薬であり、筋緊張を緩和することで筋肉痛や肩こりを改善するが、チザニジン塩酸塩は処方箋医薬品としてのみ販売される成分であり、一般用医薬品では市販されていない。
◆ 3について
3 〇 クロルフェニラミンマレイン酸塩
クロルフェニラミンマレイン酸塩はヒスタミンH1受容体遮断薬であり、鼻水・くしゃみの鼻症状を改善する。
尿検査・血液検査を控えていても問題なく、尿の着色もないので適切である
◆ 4について
4 〇 フルスルチアミン塩酸塩
フルスルチアミン塩酸塩はビタミンB1誘導体であり、筋肉・関節の痛み、肩こりを改善する。
また、病中病後の体力低下時、発熱を伴う消耗性疾患時の栄養補給を目的としても配合される。
尿検査・血液検査を控えていても問題なく、尿の着色もないので適切である
ただし、フルスルチアミンの代謝物により、尿がニンニクのような臭いとなることはある。
◆ 5について
5 × リボフラビン
リボフラビン(ビタミンB2)は感冒において消耗しやすいので、補給のためにかぜ薬に配合されることがある。
しかし、尿が黄色に着色することがあるので、尿に目立った色が着かないかぜ薬を希望する患者には適切ではない。
103回薬剤師国家試験 問207 解答解説
共役系とは、不飽和結合or非共有電子対を持つ原子or空軌道を持つ原子のいずれかと、単結合を交互に繰り返す構造である。
長い共役系を有する化合物は紫外可視領域の光を吸収する。
可視光を吸収することは呈色することにつながる。
尿の着色の原因となった化合物は、選択肢の中で最も長い共役系を有する5(リボフラビン)と考えられる。
他の選択肢は下記の通り。
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第103回問206,207(e-RECさん)