シクロヘキサンの安定配座 ジアキシアル相互作用とひずみエネルギー
本ページでは、シクロヘキサンの立体配座の安定性について、ジアキシアル相互作用とひずみエネルギーの関係を説明しています。
1,3−ジアキシアル相互作用とは、シクロヘキサン誘導体のいす形配座において、アキシアル位にある原子または原子団同士の間で生じる立体ひずみである。
原子または原子団のサイズが大きいほど、1,3−ジアキシアル相互作用のひずみエネルギーは大きい。
このことから、シクロヘキサン誘導体の立体配座の安定性は次のように考えられる。
・相対的にサイズの大きい置換基がアキシアルである配座は、1,3−ジアキシアル相互作用の立体ひずみのエネルギーが相対的に大きいことから、全ひずみエネルギーが大きく、不安定な立体配座である。
・相対的にサイズの大きい置換基がエクアトリアルである配座は、1,3−ジアキシアル相互作用の立体ひずみのエネルギーが相対的に小さいことから、全ひずみエネルギーが小さく、安定な立体配座である。
下記のAとBはcis-1-tert-butyl-2-methylシクロヘキサンのいす形配座である。
青色の両矢印が1,3−ジアキシアル相互作用を表す。
cis-1-tert-butyl-2-methylシクロヘキサンには、置換基としてtert-ブチル基(ターシャリーブチル基)とメチル基が存在するが、tert-ブチル基の方が相対的にかさ高い。よって、tert-ブチル基がアキシアルの時に生じる1,3−ジアキシアル相互作用は、メチル基がアキシアルの時に生じる1,3−ジアキシアル相互作用よりも相対的に大きい。
したがって、tert-ブチル基がエクアトリアルであるBの方が、全ひずみエネルギーは小さく、安定な立体配座であるといえる。
以上のように、シクロヘキサン誘導体の立体配座の安定性について、相対的にサイズの大きい置換基がエクアトリアルである立体配座が、ひずみエネルギーの小さい安定な配座であると考えることができる。