ピボキシル基の構造・代謝と低カルニチン血症に伴う低血糖
本ページでは、ピボキシル基の構造・代謝と低カルニチン血症に伴う低血糖について説明しています。
小児等に対するピボキシル基を有する抗菌薬投与においては、血中カルニチンの低下に伴う低血糖が起こることがあるため、意識レベルの低下や痙攣に注意し、症状が現れた場合は直ちに受診する必要がある。脳症を起こし、後遺症に至るケースの報告もある。
また、妊娠後期の妊婦に対する投与においても、妊婦,および,その出生児で低カルニチン血症の報告がある。
発生機序としては、ピボキシル基が代謝されて生成するピバル酸(ピバリン酸)はカルニチン抱合を受けて尿中排泄されることから、カルニチンの尿中排泄が促進され、血清カルニチンが低下し、脂肪酸のβ酸化において脂肪酸アシルCoAをミトコンドリア内に輸送するカルニチンが不足することで、脂肪酸のβ酸化から得られるエネルギーが減少する。これが、結果として糖新生の低下につながり、低血糖となる。
セフジトレンピボキシル(メイアクト)を例に、ピボキシル基の代謝を説明する。
下記の赤枠内がピボキシル基の構造である。
セフジトレンピボキシルは、生体内でエステラーゼによりエステル結合が加水分解される(下の図の赤点線の位置で)。
その後の代謝反応を経て、活性体のセフジトレンが生成する他、ピボキシル基の部分からはホルムアルデヒドとピバル酸(2,2-dimethylpropanoic acid)を生じることになる。
なお、体内で生成するホルムアルデヒドは発疹や消化管障害等の副作用を起こすことが示唆されている。ホルムアルデヒドは二酸化炭素として呼気中に排泄される。