誘起効果・共鳴効果とは? 官能基(置換基)ごとに電子供与性・求引性を区別

★ 官能基による誘起効果と共鳴効果

 

官能基が与える誘起効果と共鳴効果という電子効果について説明。

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★ 官能基の電子効果

 

官能基の電子効果には、誘起効果(Inductive effect:I効果)と共鳴効果(resonance effect:R効果)がある。

 

・誘起効果(I効果)
誘起効果(I効果)とは、σ結合を介して電子が供与・求引されることである。一例として電気陰性度の差による電子の押し・引きがある。

 

・共鳴効果(R効果)
共鳴効果(R効果)とは、官能基がsp2炭素またはsp炭素に直接結合したとき、官能基の電子がsp2炭素やsp炭素のπ結合と共鳴することにより電子が供与・求引されることである。

 

 

官能基がsp3炭素に結合するときは、誘起効果(I効果)のみを考えればよいが、
官能基がsp炭素またはsp2炭素に結合するときは、誘起効果(I効果)と共鳴効果(R効果)の両方を考える必要がある。

 

誘起効果・共鳴効果とは?官能基(置換基)ごとに電子供与性・求引性を解説

 

 

以下では、
官能基の電子効果を、@〜Cの4つの官能基の分類ごとに、sp3炭素に与える影響とsp炭素およびsp2炭素に与える影響とで分けて示す。

 

@ アミノ基(NR,アミドのアミノ基を含む),ヒドロキシ基(OH),エーテル基(OR)
・sp3炭素に対して電子求引(電子求引性誘起効果による)
・spおよびsp2炭素(芳香環など)に対して電子供与(電子供与性共鳴効果による)

 

アミノ基(NR),ヒドロキシ基(OH),エーテル基(OR)はspおよびsp2炭素(芳香環など)に対して電子供与性の共鳴効果(+R)と電子求引性の誘起効果(−I)を与えるが、+Rの方が−Iよりも強いため、結果として、sp・sp2炭素に対して電子供与性の電子効果を与えることになる。

 

 

A アルキル基
・sp3炭素に対して電子供与(電子供与性誘起効果による)
・spおよびsp2炭素(芳香環など)に対して電子供与(電子供与性誘起効果と超共役による)

 

超共役については下記のリンク先を参照
超共役とは?

 

 

B ハロゲン
・sp3炭素に対して電子求引(電子求引性誘起効果による)
・spおよびsp2炭素(芳香環など)に対して電子求引(電子求引性誘起効果による)

 

ハロゲンはsp・sp2炭素(芳香環など)に対して電子供与性の共鳴効果(+R)と電子求引性の誘起効果(−I)を与えるが、ハロゲンでは−Iの方が+Rよりも強いため、結果として、sp・sp2炭素に対して電子求引性の電子効果を与えることになる。

 

 

C =O,=NなどのO,N,Sの不飽和結合を含む官能基
・sp3炭素に対して電子求引(電子求引性誘起効果による)
・spおよびsp2炭素(芳香環など)に対して電子求引(電子求引性誘起効果と電子求引性共鳴効果による)

 

=O,=NなどのO,N,Sの不飽和結合を含む官能基として下記が挙げられる。
−NO2(ニトロ基)
−COOH(カルボキシ基)
−COOR(エステル)
−CO−(アルデヒド,ケトン)
−CN(シアノ基)
−SO2R(スルホ基)

 

以上より、
下記の表に、官能基の電子効果を、官能基の分類ごとに、sp3炭素に与える影響とsp炭素およびsp2炭素に与える影響をまとめた。

 

誘起効果・共鳴効果とは?官能基(置換基)ごとに電子供与性・求引性を解説

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