手術時,術後の血糖コントロールの必要性 100回薬剤師国家試験問208
100回薬剤師国家試験 問208
53歳男性。2型糖尿病のため、以前よりグリベンクラミド錠2.5mg 1錠とピオグリタゾン塩酸塩錠15mg 1錠を1日1回服用していた。春の定期健康診断で、胃がんが見つかり、手術の適応となった。手術時には、経口薬が使えないため、以下の処方に切り替えることとなった。
よく混和し50mL/時間で滴下し1時間ごとに血糖値をチェックすること
問208
上記の処方により、手術時及び術後に血糖値のコントロールが必要な理由として誤っているのはどれか。1つ選びなさい。
1 感染症のリスクが高くなる。
2 アルカローシスになりやすい。
3 高浸透圧性昏睡を生じる可能性がある。
4 手術侵襲により高血糖を起こしやすい。
5 創傷治癒の遅延が生じやすい。
100回薬剤師国家試験 問208 解答解説
◆ 1について
1 〇 感染症のリスクが高くなる。
高血糖では自然免疫・獲得免疫に関わる細胞の機能が低下し、免疫力が低下する。
そのため、周術期の高血糖は手術部位感染(surgical site infection:SSI)のリスクを高める。
◆ 2,3,4について
2 × アルカローシスになりやすい。
→ 〇 ケトアシドーシスになりやすい。
3 〇 高浸透圧性昏睡を生じる可能性がある。
4 〇 手術侵襲により高血糖を起こしやすい。
手術侵襲でストレスがかかると、アドレナリン,グルカゴン,コルチゾール,成長ホルモンなどの抗インスリン物質の分泌が亢進する。
これにより、インスリン分泌の低下,インスリン抵抗性の増大,グリコーゲン・タンパク質・中性脂肪の分解の促進,糖新生の促進で高血糖を起こしやすくなる。そして、高血糖から高浸透圧性昏睡を生じる可能性がある。
また、抗インスリン状態による糖利用の低下は脂肪利用を亢進するので、中性脂肪(トリグリセリド)の遊離脂肪酸への分解が促進され、ケトン体の生成の増加により、ケトアシドーシスになりやすくなる。
さらに、高浸透圧による利尿とアシドーシスによる嘔吐から電解質喪失と脱水も起こしやすい。
◆ 5について
5 〇 創傷治癒の遅延が生じやすい。
高血糖による免疫細胞の機能低下,血流障害,神経障害は創傷治癒の遅延につながる。
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第100回問208,209(e-RECさん)