アセトアミノフェンの活性代謝物と解毒薬 98回薬剤師国家試験問236,237
98回薬剤師国家試験 問236−237
48歳男性。アセトアミノフェン錠を大量に服用し、病院に搬送されてきた。服用後4時間程度と推定され、血漿中アセトアミノフェン濃度は200μg/mLを超えており、解毒薬による治療が必要と判断された。
問236(衛生)
アセトアミノフェンは代謝活性化を受けて毒性を示す。活性代謝物と考えられているのはどれか。1つ選びなさい。
問237(実務)
この男性に使用すべき解毒薬はどれか。1つ選びなさい。
1 フルマゼニル
2 ペニシラミン
3 プラリドキシムヨウ化物(PAM)
4 N -アセチルシステイン
5 アトロピン硫酸塩
★ 98回薬剤師国家試験 問236 解答解説
アセトアミノフェンの活性代謝物と考えられているのは、
N-アセチル-p -ベンゾキノンイミン(NAPQI)であり、
選択肢4の構造物が該当する。
アセトアミノフェンの代謝経路の詳細は下記のリンク先を参照
アセトアミノフェンの代謝経路
アセトアミノフェンは大部分がグルクロン酸抱合や硫酸抱合で代謝されるが、
一部はCYP2E1により代謝されN-アセチル-p -ベンゾキノンイミン(NAPQI)や3-ヒドロキシアセトアミノフェンを生じる。
N-アセチル-p -ベンゾキノンイミン(NAPQI)は肝細胞のタンパク質と結合し、
肝細胞障害(肝細胞のネクローシス)を引き起こす。
アセトアミノフェンが大量投与されると、
グルクロン酸抱合や硫酸抱合による解毒代謝が飽和し、
CYP2E1による代謝物のN-アセチル-p -ベンゾキノンイミン(NAPQI)が多く生成し、
グルタチオンも枯渇してしまう。
そして、NAPQIが肝障害,腎障害の中毒症状を引き起こすと考えられている。
また、日常的な飲酒はCYP2E1の誘導とグルタチオンの欠乏につながり、NAPQIによる有害事象を促す。
★ 98回薬剤師国家試験 問237(実務)
設問の患者はアセトアミノフェン中毒である。
アセトアミノフェン中毒の解毒薬として、
4のN -アセチルシステインが用いられる。
N-アセチルシステインは生体内で脱アセチル化されてシステインに変換されるので、
グルタチオンの前駆物質として働き、
グルタチオンの生合成量を増やすことで、
アセトアミノフェン中毒の原因となるN-アセチル-p -ベンゾキノンイミンのグルタチオン抱合による解毒を促進すると考えられる。
N-アセチル-p -ベンゾキノンイミンとグルタチオンの反応機構の詳細は
下記のリンク先を参照
アセトアミノフェンの代謝物に対するグルタチオン抱合の機構 102回問209
他の選択肢について
1のフルマゼニルはベンゾジアゼピン受容体拮抗薬であり、
ベンゾジアゼピン中毒に対して用いられる。
2のペニシラミンはキレート剤であり、
銅・鉛・水銀などの重金属の中毒に対して用いられ、
これらの金属とキレートを形成して排泄を促進する。
3のプラリドキシムヨウ化物(PAM)は有機リン系薬物中毒の治療薬である。
プラリドキシムヨウ化物(PAM)は、
有機リン系薬物とアセチルコリンエステラーゼとを結ぶリン酸結合を切断し、
アセチルコリンエステラーゼの活性を回復させる。
5のアトロピン硫酸塩は有機リン系薬物とカルバメート系薬物の中毒の治療薬である。
有機リン系薬物とカルバメート系薬物はアセチルコリンエステラーゼを阻害し、
アセチルコリンの蓄積による中毒症状を引き起こすが、
アトロピン硫酸塩はムスカリン性アセチルコリン受容体の拮抗薬であり、
抗コリン作用により有機リン系薬物とカルバメート系薬物の中毒を治療する。
★ 他サイトさんの解説リンク
98回問236,237(e-RECさん)