妊娠糖尿病に用いる薬物 100回薬剤師国家試験問268−269

100回薬剤師国家試験 問268−269
35歳女性。妊娠初期に妊娠糖尿病と診断され、食事療法を行っていたが血糖コントロールが不良となったため、薬物療法の開始が検討された。

 

問268(実務)
この患者に用いる薬物として最も適切なのはどれか。1つ選びなさい。
1 アカルボース
2 ヒトインスリン(遺伝子組換え)
3 シタグリプチンリン酸塩水和物
4 ナテグリニド
5 メトホルミン塩酸塩

 

問269(薬剤)
薬物の胎盤透過に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 一般に、分子量5000以上の薬物も透過して胎児へ移行する。
2 胎盤にはP−糖タンパク質が発現し、薬物の胎児への移行を促進している。
3 多くの薬物の胎盤透過は、pH分配仮説に従う。
4 一般に、母体中の血漿タンパク質結合形薬物は、胎児へ移行しない。
5 一般に、水溶性の高い薬物ほど胎盤を透過しやすい。

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100回薬剤師国家試験 問268 解答解説

 

妊娠糖尿病患者に用いる薬物として最も適切なのは、
選択肢2のヒトインスリン(遺伝子組換え)である。

 

妊娠糖尿病とは、妊娠中に初めて発見された軽度の糖代謝異常である。
妊娠中に初めて発見された糖代謝異常であっても、
軽度でないものは、「妊娠中の明らかな糖尿病」とされ、妊娠糖尿病とは区別される。
なお、すでに糖尿病と診断されていた者が妊娠した場合は、「糖尿病合併妊娠」とされる。

 

妊娠すると、胎盤から分泌されるホルモンの働きでインスリンの働きが抑えられ、
さらに、胎盤でインスリンを分解する酵素が作られるため、
妊娠していないときと比べて血糖値が上がりやすくなる。

 

日本において、妊娠中の糖尿病の治療に使えるのは、原則インスリンのみである。

 

 

100回薬剤師国家試験 問269 解答解説

 

◆ 1,3,4,5について
1 × 一般に、分子量5000以上の薬物も透過して胎児へ移行する。
→ 〇 一般に、分子量1000以上の薬物は、胎盤を透過しない。

 

3 ○ 多くの薬物の胎盤透過は、pH分配仮説に従う。

 

4 ○ 一般に、母体中の血漿タンパク質結合形薬物は、胎児へ移行しない。

 

5 × 一般に、水溶性の高い薬物ほど胎盤を透過しやすい。
→ 〇 一般に、脂溶性の高い薬物ほど胎盤を透過しやすい。

 

 

母体血と胎児血の間には、
合胞体性栄養膜細胞(シンシチオトロボプラスト細胞)を実体とする血液胎盤関門が存在し、
薬物の胎児血への移行を制限している。

 

多くの薬物の胎盤透過は、単純拡散により起こり、pH分配仮説に従う。
よって、分子量が小さく、脂溶性が高い薬物ほど胎盤を透過しやすい。
母体血中でタンパク結合した薬物は、胎盤関門を透過しない。

 

 

◆ 2について
2 × 胎盤にはP−糖タンパク質が発現し、薬物の胎児への移行を促進している。
→ 〇 胎盤にはP−糖タンパク質が発現し、薬物の胎児への移行を抑制している。

 

血液胎盤関門の合胞体性栄養膜細胞の刷子縁膜側にはP-糖タンパク質が発現し、
薬物を細胞内から母体血中へ排出している。

 

 

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