アトピー性皮膚炎の外用薬の配合変化と服薬指導 102回薬剤師国家試験問276,277

102回薬剤師国家試験 問276−277
7歳女児。アトピー性皮膚炎と診断され、母親とともに処方箋を薬局に持参した。

 

102回薬剤師国家試験問276,277 外用薬の配合変化と服薬指導

 

問276(薬剤)
本処方箋の発行前に、医師より処方1と処方2の混合について問い合わせがあった。混合が推奨されない理由として正しいのはどれか。1つ選びなさい。
1 ベタメタゾン吉草酸エステルの分解が促進される。
2 白色ワセリンと混ぜ合わせると、クリーム剤の分離や粘性の増加が生じる。
3 基剤同士が反応し、褐色に変化する。
4 白色ワセリンの添加により、クリーム剤中の水相へのベタメタゾン吉草酸エステルの分配量が増加する。
5 白色ワセリンの添加により、吸湿性が増大する。

 

問277(実務)
薬剤師が患者の家族に説明する内容として適切でないのはどれか。2つ選びなさい。
1 処方1は、ステロイドの作用の強さの5段階分類の中で最も弱い薬です。
2 夕方(夜)は、入浴後に塗るようにしてください。
3 白色ワセリンには皮膚保護作用があります。
4 お薬のほかに、室内環境の整備や皮膚を清潔に保つことも重要です。
5 タクロリムス軟膏は、顔には使用しないでください。

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102回薬剤師国家試験 問276(薬剤) 解答解説

 

102回薬剤師国家試験問276,277 外用薬の配合変化と服薬指導

 

処方1のベタメタゾン吉草酸エステルクリームと処方2の白色ワセリンの混合が推奨されない理由として正しいのは、選択肢2の「白色ワセリンと混ぜ合わせると、クリーム剤の分離や粘性の増加が生じる」である。

 

複数の外用薬を混合すると、組み合わせによっては、個々の性質が損なわれたり、互いに分離したりするので、注意が必要である。

 

外用薬の基剤による混合の可否は下記の表の通り。

 

102回薬剤師国家試験問276,277 外用薬の配合変化と服薬指導

 

ただし、〇であっても混合不可の場合もある。例えば、タクロリムス軟膏(プロトピック軟膏)は基剤中に微細な液滴として分散した液滴分散系軟膏であり、他剤と混合することにより液滴が合一して大きくなるため、混合することは好ましくないとされている。

 

ベタメタゾン吉草酸エステルクリームはo/w型乳剤性基剤、白色ワセリンは油脂性基剤なので、
これらを混合すると、分離したり、クリームの乳化の破壊や粘性の増加が生じる恐れがあるので、混合は推奨されない。
なお、薬名に「クリーム」と付くものは、大体がo/w型乳剤性基剤であるが、メサデルムクリームやネリゾナユニバーサルクリームのようにw/o型乳剤性基剤のものもある。

 

 

102回薬剤師国家試験 問277(実務) 解答解説

 

102回薬剤師国家試験問276,277 外用薬の配合変化と服薬指導

 

◆ 1について
1 × 処方1は、ステロイドの作用の強さの5段階分類の中で最も弱い薬です。

 

ベタメタゾン吉草酸エステルクリーム(リンデロンV,ベトネベート)は、5段階分類の中の3段階目の強い(strong)に分類される。

 

 

◆ 2について
2 〇 夕方(夜)は、入浴後に塗るようにしてください。

 

皮膚に汚れがあると薬が浸透しにくくなるため、塗り薬は皮膚をきれいにしてから塗る。
入浴後は皮膚がきれいなので、塗り薬を使うのに良いタイミングである。
また、入浴すると、皮脂が除去され、さらに、角質から水分が蒸散しやすくなっているため、時間とともに皮膚が乾燥しやすい。よって、入浴後の保湿の必要性からも、塗り薬は入浴後に使うことが勧められる。

 

 

◆ 3について
3 〇 白色ワセリンには皮膚保護作用があります。

 

白色ワセリンとは、石油から得られる炭化水素類の半固形混合物を精製し、脱色したものであり、
白色?微黄色の軟膏様の油脂性基剤である。
一般に油脂性基剤は、皮膚浸透性は低いが、低刺激性で、皮膚の保護・保湿作用があり、
乾燥型と湿潤型の両方の皮膚疾患に用いることができる。

 

 

◆ 4について
4 〇 お薬のほかに、室内環境の整備や皮膚を清潔に保つことも重要です。

 

アトピー性皮膚炎はT型アレルギーで発症し、皮膚のバリア機能が低下している。
ダニやハウスダストなどのアレルゲンを除去するために、室内環境を整備することは重要である。
また、皮膚の汚れによる炎症やかゆみ、細菌や真菌による感染症を防ぐために、皮膚を清潔に保つことが重要である。

 

 

◆ 5について
5 × タクロリムス軟膏は、顔には使用しないでください。

 

タクロリムス軟膏(プロトピック軟膏)は顔に使用できる。
顔や首は皮膚が薄くステロイド外用薬の副作用が出やすい。
タクロリムス軟膏は顔や首の炎症に良く効くため、顔や首の炎症に対してはタクロリムス軟膏が選択されることがある。
なお、タクロリムス軟膏は、使用後、一過性に皮膚刺激感(灼熱感、ほてり感、疼痛、そう痒感等)が高頻度に認められるが、通常、皮疹の改善とともに発現しなくなる。よって、使用直後は皮膚刺激感があることについて患者に説明する必要がある。

 

 

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