FOLFIRI+ベバシズマブ療法の薬の作用機序 102回薬剤師国家試験問264
102回薬剤師国家試験 問264
58歳男性。手術不能の直腸がんと診断され、以下に示すレジメンに従った化学療法を施行することとなった。
処方薬の作用機序として正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 血管内皮細胞増殖因子(VEGF)受容体に結合する。
2 トポイソメラーゼTを阻害する。
3 DNAをアルキル化する。
4 チミジル酸合成酵素を阻害する。
102回薬剤師国家試験 問264(薬理) 解答解説
本問のレジメンは、手術不能の直腸がんに対するFOLFIRI+ベバシズマブ療法のものである。
処方薬の作用機序として正しいのは、
選択肢2の「トポイソメラーゼTを阻害する」と、
選択肢4の「チミジル酸合成酵素を阻害する」である。
トポイソメラーゼTを阻害する作用を示すのは、イリノテカンである。
イリノテカンはカンプトテシン誘導体の抗がん剤であり、
生体内のカルボキシエステラーゼでエステル結合が加水分解され、
活性代謝物のSN-38を生成するプロドラッグである。
SN-38はI型DNAトポイソメラーゼを阻害することによって、DNA合成を阻害する。
殺細胞効果は細胞周期のS期に特異的であり、
制限付時間依存性に効果を示す薬剤である。
チミジル酸合成酵素を阻害するのは、フルオロウラシルである。
5-FUは細胞内で5-フルオロデオキシウリジン-5´-一リン酸(FdUMP)に代謝され、チミジル酸シンターゼ(チミジル酸合成酵素)と共有結合を形成し、
これを不可逆的に阻害することで、核酸合成を阻害する。
フルオロウラシルと併用されるレボホリナートカルシウムは、フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強させる目的で投与される。
レボホリナートは細胞内で還元され、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸となる。
5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸は、FdUMP,チミジル酸シンターゼと強固な三元複合体を形成し、チミジル酸シンターゼの解離を遅延させることにより、フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強させる。
ベバシズマブ(アバスチン)は、ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)に対する遺伝子組換え型ヒト化モノクローナル抗体である。ベバシズマブは、ヒトVEGFと特異的に結合することにより、VEGFと血管内皮細胞上に発現しているVEGF受容体との結合を阻害する。ベバシズマブはVEGFの生物活性を阻止することにより、腫瘍組織での血管新生を抑制し、腫瘍の増殖を阻害する。また、VEGFにより亢進した血管透過性を低下させ、腫瘍組織で亢進した間質圧を低減する。