XELOX療法の服薬指導 109回薬剤師国家試験問212,213

109回薬剤師国家試験 問212−213
57歳男性。身長175 cm、体重63 kg。患者は大腸がんの治療で、3ケ月前より病院でFOLFIRI 療法(イリノテカン注、レボホリナート注、フルオロウラシル静脈注射、フルオロウラシル持続注射)を施行していた。持続注射が辛いとの患者の訴えがあり、XELOX 療法(カペシタビン・オキサリプラチン療法)に変更され、今回、患者が処方1 及び処方2 の処方箋を持って、来局した。その際、患者から、「最近手のひらが赤くなって痛くなってきた」、「点滴をした日は手にしびれも現れる」、「副作用がとても心配である」との訴えがあった。

 

109回薬剤師国家試験問212 XELOX療法・カペシタビンの服薬指導

 

問212(実務)
この患者への薬局薬剤師の指導内容として適切なのはどれか。2つ選びなさい。
1 手の赤みや痛みの症状は一過性ですぐに良くなるので、心配ありません。
2 手の赤みや痛みの症状がなくなっても、処方2の薬を指示どおり継続して塗布してください。
3 点滴治療をした日に手のしびれを感じた際は、冷水でよく冷やしてください。
4 手のしびれは数日後に軽快しますが、ひどく痛みが続く場合は、医師に連絡してください。
5 激しい下痢が生じた場合は、市販の下痢止めを服用して、処方1 の薬を継続して服用してください。

 

問213(物理・化学・生物)
カペシタビンは、段階的にフルオロウラシルに代謝されるプロドラッグである。体内におけるカペシタビンの代謝を示した下図に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。

 

109回薬剤師国家試験問212 XELOX療法・カペシタビンの服薬指導

 

1 カペシタビンの点線で囲った構造は、分子の疎水性を高める。
2 Aは二酸化炭素(CO2)である。
3 Bの糖部はD−リボースである。
4 Cの点線で囲った酸素原子は、水に溶けている酸素分子(O2)に由来する。
109回薬剤師国家試験問212 XELOX療法・カペシタビンの服薬指導

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109回薬剤師国家試験 問212(実務) 解答解説

 

大腸がんのXELOX療法(ゼロックス療法:カペシタビン・オキサリプラチン療法)に関する問題である。

 

109回薬剤師国家試験問212 XELOX療法・カペシタビンの服薬指導

 

◆ 1,2について
1 × 手の赤みや痛みの症状は一過性ですぐに良くなるので、心配ありません。

 

2 〇 手の赤みや痛みの症状がなくなっても、処方2の薬を指示どおり継続して塗布してください。

 

手の赤みや痛みの症状は、カペシタビン錠(ゼローダ錠)の手足症候群の副作用だと考えられる。
手足症候群とは、抗がん剤の使用により、手足の皮膚や爪の細胞が障害され、手足の感覚の異常,手足の皮膚の異常,爪の異常が現れる副作用である。具体的な症状は以下の通り。
● 手や足の感覚の異常
「しびれ」「チクチク、ピリピリした痛み」、「痛みに敏感」
「熱い砂の上を歩いているか、靴の中に砂利があるかのような感覚」

 

● 手や足の皮膚の変化
「赤み(発赤、紅斑)」「むくみ」「色素沈着」
「カサカサする乾燥」「角化(皮膚表面が硬く、厚くなってガサガサする状態)」「ひびわれ」「水ぶくれ(水ほう)」
「落屑(剥がれ落ちる)」「指紋が無くなる」

 

● 爪の変形
「変形」「色素沈着」「うすくなる」「割れる」

 

手足症候群は、原因薬剤を減量・休薬すれば改善する。
原因薬剤を減量せずに続ける場合、症状の軽いうちに対処すれば良くなるが、
放置すると症状が悪化し、重症化すると、減量・休薬しても症状の消失・軽快に長期間を要する。
よって、手足症候群の原因となる薬剤を服用中は、手足の感覚,皮膚・爪の状態を注意深く観察し、症状悪化の前に休薬等の適切な処置をする必要がある。

 

手足症候群の予防や症状改善の方法として、手足の保湿は有効であるので、
処方2のヘパリン類似物質クリーム0.3%(ヒルドイドクリーム)は、症状がなくなっても継続するよう指導する。

 

 

◆ 3,4について
3 × 点滴治療をした日に手のしびれを感じた際は、冷水でよく冷やしてください。

 

4 〇 手のしびれは数日後に軽快しますが、ひどく痛みが続く場合は、医師に連絡してください。

 

オキサリプラチン(エルプラット)は、
末梢神経障害の副作用があり、症状として手足口のしびれや痛み、感覚異常、咽頭喉頭の絞扼感、手足の動作不良などが現れる。
抗がん剤による末梢神経障害には、急性症状と慢性症状があり、
急性症状は、投与直後から5日後までに現れ、数日で軽快する。
急性症状は低温又は冷たいものへの曝露により誘発又は悪化するため、冷水・氷の使用や冷たい飲み物の摂取を避け、低温時には皮膚を露出しないよう指導する。

 

末梢神経障害の慢性症状は、抗がん剤の累積投与量が増えることにより出現する。

 

末梢神経症状の悪化や回復遅延が認められると、手、足等がしびれて文字を書きにくい、ボタンをかけにくい、飲み込みにくい、歩きにくい等の感覚性の機能障害があらわれることがある。感覚性の機能障害があらわれた場合には減量、休薬、中止等の適切な処置を行う必要がある。
よって、症状が続く場合は、医師に連絡するよう指導する。

 

 

◆ 5について
5 × 激しい下痢が生じた場合は、市販の下痢止めを服用して、処方1 の薬を継続して服用してください。

 

カペシタビン錠(ゼローダ錠)の副作用として、下痢を起こすことがあり、ひどくなければ下痢止めで対処し、カペシタビンの服薬を継続する。
しかし、激しい下痢があらわれた場合は、脱水症状に至ることがあるため、カペシタビンの服薬を中止し、医療機関で補液、電解質投与等の適切な処置を受けることになる。

 

 

109回薬剤師国家試験 問213(物理・化学・生物) 解答解説

 

下記のリンク先を参照
カペシタビンの代謝経路 109回問213

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