オキサリプラチン点滴静注液の希釈に用いた輸液はどれか 104回薬剤師国家試験問206

104回薬剤師国家試験 問206
60歳男性。体重50kg、体表面積1.5m2。再発直腸がんで外来通院しながら以下の化学療法(処方1,2)を受けることになり、化学療法施用当日の夕方17時に来院した。医師の指示のもと薬剤師が施用準備のため安全キャビネットでオキサリプラチン点滴静注液を輸液Aで希釈した。施用直前に患者が体調不良を訴えたため、翌日10時に再来し施用することになった。看護師は薬剤師に輸液Aで希釈したオキサリプラチン点滴静注液が翌日使用できることを確認し、速やかに冷所保存した。

 

オキサリプラチン点滴静注液の希釈に用いた輸液はどれか 104回薬剤師国家試験問206

 

問206
薬剤師がオキサリプラチン点滴静注液の希釈に用いた輸液Aはどれか。1つ選びなさい。
1 5%ブドウ糖注射液 250mL
2 乳酸リンゲル液 500mL
3 生理食塩液 250mL
4 7%炭酸水素ナトリウム注射液 250mL
5 ビタミンB1・糖・電解質・アミノ酸液 500mL

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104回薬剤師国家試験 問206 解答解説

 

オキサリプラチン点滴静注液(エルプラット)の希釈に用いられたのは、
1の「5%ブドウ糖注射液」だと考えられる。

 

オキサリプラチン点滴静注液の希釈に用いた輸液はどれか 104回薬剤師国家試験問206

 

 

オキサリプラチン点滴静注液(エルプラット)の使用に関して、添付文書中に下記の記載がある。

 

・本剤は、錯化合物であるので、他の抗悪性腫瘍剤とは混合調製しないこと。
・本剤を5%ブドウ糖注射液に注入し、250〜500mLとすること。
・本剤は塩化物含有溶液により分解するため、生理食塩液等の塩化物を含む輸液との配合を避けること。
よって、「乳酸リンゲル液」「生理食塩液」「ビタミンB1・糖・電解質・アミノ酸液」で希釈するのは不適当である。

 

・本剤は塩基性溶液により分解するため、塩基性溶液との混和は行わないこと。また、塩基性溶液と同じ点滴ラインを用いた同時投与は行わないこと。
よって、「7%炭酸水素ナトリウム注射液」で希釈するのは不適当である。

 

・本剤のような白金化合物は、アルミニウムとの接触により分解することが報告されているため、本剤の調製時にアルミニウムが用いられている機器(注射針等)は使用しないこと。また、本剤の投与時にアルミニウムが用いられている機器(注射針等)は使用しないこと。

 

・本剤は細胞毒性を有するため、調製時には手袋を着用することが望ましい。皮膚に薬液が付着した場合には、直ちに石鹸及び多量の流水で洗い流すこと。眼、粘膜に薬液が付着した場合には、直ちに多量の流水でよく洗い流すこと。
静脈内投与に際し、薬液が血管外に漏れると、注射部位に硬結・壊死を起こすことがあるので、薬液が血管外に漏れないように慎重に投与すること。

 

・本剤は15℃以下で保存した場合、結晶を析出することがある。15℃以下での保存は推奨されない。析出した場合は振盪するなどして、溶解させた後に使用すること。

 

 

・本剤は希釈後、できるだけ速やかに投与すること。

 

 

★ シスプラチン注の調製時は生理食塩水に混和する。

 

オキサリプラチン点滴静注液の希釈に用いた輸液はどれか 104回薬剤師国家試験問206

 

シスプラチン(ランダ)は細胞内の低塩化物イオン濃度において、Ptに対する配位子の塩素が水に置換して活性型となり抗腫瘍効果を発揮する。
希釈後溶液の塩化物イオン(Cl−)濃度が低いと、輸液中でシスプラチンの活性型への変換が進み、細胞内に移行できないものが増えて薬効が低下し、かつ、腎毒性が増強される。
そのため、シスプラチン注(ランダ)の溶液はCl−濃度が低くならないよう、調製時は生理食塩液に混和し、
投与時は生理食塩液又はブドウ糖-食塩液に混和する。

 

 

★ 結腸・直腸がんに対するXELOX法

 

設問の処方は、直腸がんに対するカペシタビン(ゼローダ:XELODA)とオキサリプラチン(エルプラット)の併用療法であり、XELOX法と呼ばれる。ベバシズマブBevacizumab(アバスチン:血管内皮増殖因子VEGFに対するヒト化モノクローナル抗体)を併用する場合もある。

 

 

・カペシタビン(ゼローダ:XELODA)の作用

 

カペシタビンはフルオロウラシル(5-FU)のプロドラッグである。

 

オキサリプラチン点滴静注液の希釈に用いた輸液はどれか 104回薬剤師国家試験問206

 

カペシタビン(ゼローダ)の添付文書中の作用機序の記載は下記の通り。
「カペシタビンは消化管より未変化体のまま吸収され、肝臓でカルボキシルエステラーゼにより5’-DFCRに代謝される。次に主として肝臓や腫瘍組織に存在するシチジンデアミナーゼにより5’-DFURに変換される。更に、腫瘍組織に高レベルで存在するチミジンホスホリラーゼにより活性体である5-FUに変換され抗腫瘍効果を発揮する。5-FUはFdUMPに代謝され、チミジル酸合成酵素及び5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸と不活性複合体を形成する。その結果チミジル酸合成を抑制することにより、DNA合成を阻害する。
また、5-FUはFUTPに代謝され、UTPの代わりにRNAに取り込まれてF-RNAを生成し、リボソームRNA及びメッセンジャーRNAの機能を障害すると考えられている。」

 

なお、5’-DFURを5-FUに変換するチミジンホスホリラーゼは、通常、チミジンに無機リン酸を反応させて加リン酸分解し、チミンと2´-デオキシ-D-リボース1リン酸を生成する反応を触媒する。

 

 

・オキサリプラチンの作用

 

オキサリプラチン点滴静注液の希釈に用いた輸液はどれか 104回薬剤師国家試験問206

 

オキサリプラチン(エルプラット)の添付文書中の作用機序の記載は下記の通り。
「ヒトにおいてオキサリプラチンは、生体内変換体(ジクロロ1,2-ジアミノシクロヘキサン(DACH)白金、モノアクオモノクロロDACH白金、ジアクオDACH白金)を形成し、癌細胞内のDNA鎖と共有結合することでDNA鎖内及び鎖間の両者に白金-DNA架橋を形成する。これらの架橋がDNAの複製及び転写を阻害する。」

 

 

・ベバシズマブBevacizumab(アバスチン)の作用

 

ベバシズマブ(アバスチン)の添付文書中の作用機序の記載は下記の通り。
「ベバシズマブは、ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)に対する遺伝子組換え型ヒト化モノクローナル抗体である。VEGFは、血管内皮細胞の細胞分裂促進・生存を制御するとともに血管透過性の亢進に関与するサイトカインであり、種々の癌細胞において発現が亢進している。ベバシズマブは、ヒVEGFと特異的に結合することにより、VEGFと血管内皮細胞上に発現しているVEGF受容体との結合を阻害する。
ベバシズマブはVEGFの生物活性を阻止することにより、腫瘍組織での血管新生を抑制し、腫瘍の増殖を阻害する。また、VEGFにより亢進した血管透過性を低下させ、腫瘍組織で亢進した間質圧を低減する。」

 

ベバシズマブ(遺伝子組換え)は、遺伝子組換えヒト化モノクローナル抗体であり、マウス抗ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)モノクローナル抗体の相補性決定部、ヒトフレームワーク部及びヒトIgG1の定常部からなる。ベバシズマブ(遺伝子組換え)は、チャイニーズハムスター卵巣細胞により産生される。

 

 

★他サイトさんの解説へのリンク
104回問206,207(e-RECさん)

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