塩基性・求核性とは? 違いと相関の理解のために
本ページでは、物質の塩基性と求核性について説明しています。
◆ 塩基性
物質の塩基性とは、H+に対する反応性(結合力)であり、反応の平衡論的(熱力学的)な指標である(可逆反応の指標)。
アニオンの塩基性について、負電荷の安定性が高いほど塩基性は弱くなる。電荷が広く分散するほど安定性は高く、電荷が狭く局在するほど安定性は低い。
したがって、同族元素のアニオンの塩基性の比較について、周期表で下に行くにつれ、原子半径が大きくなるほど、負電荷が広く分散されるので塩基性は弱くなる
例えば、、OとSは同族元素だが、HS−はHO−より塩基性が弱い。
また、ハロゲン化物イオン(X−)の塩基性の強さの序列は、
F−>Cl−>Br−>I−であり、
周期表で下にある元素のアニオンほど塩基性は弱くなっている。
◆ 求核性
物質の求核性とは、正電荷を帯びる原子に対する反応性であるが、炭素など水素原子以外の原子に対する結合力であり、反応の速度論的な指標である(不可逆反応の指標)。
ルイス塩基としての他原子に対する親和力ともいえる。
・同族元素同士の求核性の比較
求核性を同族元素の間で比較すると、一般に、周期表で下に行くほど求核性が強くなる。例えば、OとSは同族でSの方が周期表の下にあるが、HS−はHO−より求核性が強い。その理由として、原子半径が大きくなるほど最外殻電子と原子核との距離が大きくなり、最外殻電子の原子核に引き付けられる力が弱くなり、最外殻電子の反応性が高くなることが考えられる。
ハロゲン化物イオン(X−)の求核性の強さの序列は、
F−<Cl−<Br−<I−であり、
周期表で下に行くほど求核性は強くなっている。
・同一周期の元素同士の求核性の比較
求核性を同一周期の元素の間で比較すると、一般に、陽子の数が多く電気陰性度が大きいほど求核性は弱くなる。
例えば、NとOは同じ第2周期の元素だが、CH3NH2の方がCH3OHよりも求核性は強い。その理由として、電子の最外殻が同じならば、陽子の数が多く電気陰性度の大きい原子ほど、最外殻電子が原子核に引き付けられる力が強まり、最外殻電子の反応性が低下することが考えられる。
◆ 求核性と塩基性の相関
物質同士の塩基性と求核性の比較において、塩基性と求核性は正に相関することが多い。塩基性が相対的に強ければ、求核性も相対的に強いといった具合である。特に、反応原子が同じもの同士の比較や、反応原子が同一周期のもの同士の比較では、塩基性の序列と求核性の序列が一致することが多い。しかし、必ずしも塩基性と求核性が正に相関するわけではない。それは、求核性と塩基性の性質の違いによる。
★ 求核性についての演習問題へのリンク
SN2の求核剤(試薬)の反応性 87回問9