イホスファミドによる治療及びメスナの投与 102回薬剤師国家試験問206

102回薬剤師国家試験 問206
28歳男性。悪性軟部腫瘍の転移が判明し、病棟カンファレンスにおいてイホスファミドの投与が検討された。薬剤師は、イホスファミドによる治療及びメスナの投与に関して医療スタッフに説明を行った。

 

薬剤師の説明として正しいのはどれか。2つ選びなさい。

 

1 イホスファミドによる骨髄抑制を予防するために、メスナの投与が必要です。

 

2 メスナの投与により抗腫瘍効果が減弱するので、イホスファミドを増量する必要があります。

 

3 メスナの併用により脳症が現れることがあるので、観察を十分に行ってください。

 

4 イホスファミドは肝代謝により消失するので、腎機能の考慮は不要です。

 

5 イホスファミド投与開始の1時間前から頻回に、かつ大量の水分摂取を行わせてください。

 

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102回薬剤師国家試験 問206 解答解説
◆ 1について
1 × イホスファミドによる骨髄抑制を予防するために、メスナの投与が必要です。

 

イホスファミドが体内で代謝される過程でアクロレインが生成し、アクロレインが出血性膀胱炎等の泌尿器系障害を引き起こすと考えられている。

 

副産物のアクロレインによる泌尿器系障害を予防するため、メスナ(ウロミテキサン)が投与される。

 

メスナ(ウロミテキサン)の添付文書上の作用機序は下記の通り。

 

ラットにおけるイホスファミド及びシクロホスファミドによる膀胱障害は,これらの尿中代謝物が膀胱粘膜と接触して発現する局所障害であり,血行を介する全身性の毒性ではない。この膀胱障害のメスナによる抑制機構としては,次の経路が推定されている。

 

(1)イホスファミド及びシクロホスファミドの尿中代謝物アクロレインが膀胱障害を誘発するが,アクロレインの二重結合にメスナが付加し,無障害性の付加体を形成する。

 

(2)イホスファミド及びシクロホスファミドの抗腫瘍活性物質4-ヒドロキシ体がメスナと縮合して,無障害性のメスナ縮合体を形成することにより,アクロレインの生成が抑制される。

 

 

◆ 2について
2 × メスナの投与により抗腫瘍効果が減弱するので、イホスファミドを増量する必要があります。

 

メスナのアクロレインによる泌尿器系障害防止の機序の1つとして、メスナがイホスファミドの抗腫瘍活性物質4-ヒドロキシ体と縮合して,無障害性のメスナ縮合体を形成することにより,アクロレインの生成を抑制することが挙げられる。
しかし、メスナ(ウロミテキサン)の添付文書の薬効薬理において、イホスファミドの抗腫瘍効果はメスナ併用により影響を受けないとの記載がある。よって、メスナを併用する場合にイホスファミドを増量する必要はないと考えられる。

 

 

◆ 3について
3 〇 メスナの併用により脳症が現れることがあるので、観察を十分に行ってください。

 

イホスファミド(イホマイド)の添付文書の併用注意に、イホスファミドとメスナの併用で脳症があらわれることがあるので,観察を十分に行うこととの記載がある(機序は不明)。

 

 

◆ 4について
4 × イホスファミドは肝代謝により消失するので、腎機能の考慮は不要です。

 

イホスファミドは肝代謝により消失する。
しかし、イホスファミドは腎障害の副作用報告が比較的多いこと、アクロレインなどの泌尿器系障害を起こす代謝産物は尿中排泄されることから、腎機能を考慮する必要がある。また、イホスファミドの主な用量規制因子(Dose Limiting Factor)は出血性膀胱炎,排尿障害等の泌尿器系障害である。

 

イホスファミド(イホマイド)の添付文書の禁忌、慎重投与に下記の記載あり。
・腎又は膀胱に重篤な障害のある患者は禁忌である(腎障害又は出血性膀胱炎を増悪するため)。
・腎又は膀胱に障害のある患者は慎重投与である(腎障害又は出血性膀胱炎を増悪するため)。

 

 

◆ 5について
5 〇 イホスファミド投与開始の1時間前から頻回に、かつ大量の水分摂取を行わせてください。

 

アクロレインなどの出血性膀胱炎,排尿障害等の泌尿器系障害を引き起こす代謝産物の尿中排泄を促すため、十分な尿量を確保する必要がある。

 

イホスファミド(イホマイド)の添付文書において、下記の使用上の注意の記載がある。

 

・本剤の投与時には十分な尿量を確保し,出血性膀胱炎等の泌尿器系障害の防止のために下記の処置を行うこと。

 

(1) 成人の場合
1) 本剤投与時の1時間前から,できるだけ頻回に,かつ大量の経口水分摂取を行い,投与終了の翌日まで1日尿量3000mL以上を確保すること。
2) 本剤投与第1日目は,投与終了直後から2000?3000mLの適当な輸液を投与するとともにメスナを併用すること。
3) 本剤投与中,経口水分摂取困難な場合は,第2日目以降,投与終了の翌日まで,上記2)に準じて輸液を投与すること。
4) 本剤投与中は必要に応じて輸液1000mLあたり40mLの7%炭酸水素ナトリウム注射液を混和し,尿のアルカリ化を図ること。また必要に応じてD-マンニトール等の利尿剤を投与すること。

 

(2) 小児の場合
本剤投与時には,1日2000?3000mL/m2(体表面積)の適当な輸液を投与するとともにメスナを併用すること。また,(1)成人の場合の4)に準じ尿のアルカリ化を図り,利尿剤を投与すること。

 

尿のアルカリ化を図る理由として、弱アルカリ性では弱酸性に比べてアクロレインの分解が促されると考えられるためである。

 

 

★他サイトさんの解説へのリンク
第102回問206,207(e-RECさん)

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