高血圧症と狭心症に適応のある薬剤 101回薬剤師国家試験 問272−273
101回薬剤師国家試験 問272−273
58歳男性。本態性高血圧症及び狭心症に対して外来で薬物治療を受けていたが、急に症状が悪化したため入院となった。薬剤師が面談し、薬物の使用状況等について尋ねたところ、めまいや、一過性の意識障害などの症状が現れることが時々あったため、最近になって自己判断で服薬を止めていたことが判明した。
問272(実務)
この患者が服用していた薬物として最も可能性が高いのはどれか。1つ選びなさい。
1 アリスキレンフマル酸塩
2 エナラプリルマレイン酸塩
3 カンデサルタンシレキセチル
4 ニフェジピン
5 フロセミド
問273(薬剤)
服薬中止のきっかけとなった症状は、この患者が最近摂取し始めた食品あるいは一般用医薬品との相互作用に起因すると考えられた。摂取していた可能性が最も高いのはどれか。1つ選びなさい。
1 牛乳
2 鉄製剤
3 アルミニウムを含む制酸剤
4 グレープフルーツジュース
5 セントジョーンズワートを含む健康食品
101回薬剤師国家試験 問272(実務) 解答解説
この患者が服用していた薬物として最も可能性が高いのは、
選択肢4のニフェジピンである。
本患者は、本態性高血圧症及び狭心症に対して薬物治療を受けている。
よって、本患者が服用している薬物は、
高血圧と狭心症に適応があるニフェジピン(アダラート)だと考えられる。
なお、ジヒドロピリジン系カルシウムブロッカーの中には、
狭心症に適応がないものもあるので注意が必要である。
101回薬剤師国家試験 問273(薬剤) 解答解説
患者に現れていためまいや、一過性の意識障害は、
ニフェジピンの副作用の可能性がある。
このことから、本患者が摂取していた可能性が最も高い食品は、
選択肢4のグレープフルーツジュースである。
グレープフルーツジュースに含まれるフラノクマリン系化合物は、
小腸のCYP3A4を不可逆的に阻害する。
これは、フラノクマリン系化合物の代謝物または代謝中間体が、
小腸のCYP3A4のヘム鉄と共有結合を形成し、
安定な複合体となることでCYP3A4の活性を阻害する。
この機構によるCYPの阻害は、不可逆的な阻害であり、
新しいCYPが合成されるまで阻害が続くと考えられている。
ジヒドロピリジン系カルシウムブロッカーのニフェジピン(アダラート)は、
主にCYP3A4で代謝されて不活化するため、
グレープフルーツジュースを摂取すると、小腸のCYP3A4が不可逆的に阻害され、
ニフェジピンの血中濃度が上昇し、作用が増強される。
なお、選択肢5のセントジョーンズワートを含む健康食品について、
セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)には、
P-糖タンパク(MDR1)の発現誘導作用、
および、小腸や肝臓でのCYPの発現誘導作用があり、
併用薬の血中濃度を低下させ、作用を減弱させるおそれがある。
関連問題
グレープフルーツジュースの薬物相互作用の機序 104回問270−271
★ 他サイトさんの解説リンク
101回問272,273(e-RECさん)