タクロリムス 医薬品化学 98回薬剤師国家試験問209
98回薬剤師国家試験 問209
タクロリムス水和物に関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選びなさい。
1 テトラサイクリン系抗生物質に分類される。
2 L-プロリンを含む。
3 テトラヒドロフラン環を含む。
4 四角で囲んだ三置換アルケンの立体化学はEである。
5 強アルカリ性で安定に存在する。
98回薬剤師国家試験 問209 解答解説
◆ 1について
1 × テトラサイクリン系抗生物質に分類される。
環状エステルをラクトンと呼ぶ。
タクロリムスは大環状ラクトン構造を有するのでマクロライドである。
タクロリムスは免疫抑制薬として使用され、
移植における拒絶反応及び移植片対宿主病(graft versus host disease)の抑制、関節リウマチ、ループス腎炎、
難治性の活動期潰瘍性大腸炎、多発性筋炎・皮膚筋炎に合併する間質性肺炎、重症筋無力症、プロトピック軟膏としてアトピー性皮膚炎、点眼として春季カタルに適応される。
タクロリムスの作用機序について、
T細胞受容体等からのシグナル伝達を介した免疫亢進作用に重要な酵素としてカルシニューリンがある。
タクロリムスは、イムノフィリンのFKBPタンパク質と結合することで、カルシニューリン/NF-AT系を抑制することによりT細胞の活性化を抑制する。これによりIL-2やインターフェロンなどのサイトカインの産生が抑制され、細胞障害性T細胞の誘導も抑制されるので、免疫抑制効果が得られる。
なお、テトラサイクリン系抗生物質は、下記のミノサイクリンのように4つの環が融合した骨格を有する。
テトラサイクリン系抗生物質の作用機序について、
細菌の蛋白合成系において、テトラサイクリン系抗生物質は細菌リボソームの30Sサブユニットに結合することで、アミノアシルt-RNAがm-RNA・リボソーム複合物と結合するのを妨げ、蛋白合成を阻止させることにより抗菌作用を発揮する。
◆ 2,3について
2 × L-プロリンを含む。
L-プロリンは下記のようにピロリジンを有するアミノ酸であるが、
タクロリムスには含まれない。
なお、タクロリムスに含まれる含窒素複素環はピペリジンである。
◆ 3について
3 × テトラヒドロフラン環を含む。
→ 〇 テトラヒドロピラン環を含む。
詳細は下記のリンク先を参照
98回問209の3
◆ 4について
4 〇 四角で囲んだ三置換アルケンの立体化学はE である。
詳細は下記のリンク先を参照
タクロリムスのアルケンの立体化学 106回問109の3
◆ 5について
5 × 強アルカリ性で安定に存在する。
タクロリムスはエステルやアミドを有するが、これらの結合は強酸性条件下および強アルカリ性条件下で加水分解されやすい。
そのため、タクロリムス注射液(プログラフ注)のpHは4.5〜7.5となっている。
★参考外部サイトリンク
タクロリムス(日本薬学会さん)
★他サイトさんの解説へのリンク
第98回問209(e-RECさん)